2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年5月14日

 4月18日付け米Wall Street Journal紙で、Michael Auslin米AEI日本研究部長は、最近の中国の国防白書に見られる対米、対日非難、被害妄想的世界観を批判しています。

 すなわち、中国は最近「国防白書」を出し、中国のメディアは透明性向上を称賛している。2011年のものに次ぐ白書は確かに物事を明らかにした。

 初めて、中国軍の人員総数が140万人であることを明記した。これまでの推定以下だが、多分、準軍事要員や警察が数えられていないからであろう。

 この白書は、中国政府の戦略的見解の最も明確な声明と見ることが出来よう。しかし、その声明の内容には、心配なことが多い。白書は日米を強く非難し、領土要求を「必要なあらゆる手段」で守るとしている。習近平は米中関係改善のためにほとんど何もしないだろう。

 中国の被害者的世界観と現実とのギャップは、白書の米国の取り扱いに最も明確に表れている。白書は、米国のアジアへの「軸足移動」は、軍事配備や同盟強化によって、情勢を緊迫させるとしている。中国によれば、米国の対応は20年にわたる中国軍事費の二桁成長や、中国の強引な安全保障姿勢への対応ではなく、世界で新たな攻撃対象を見出す動きである。

 白書によると、中国の行動は、地域の不安定化や信頼の喪失に何の影響も与えていないが、米国の政策のみが地域を不安定化しているそうだ。米国を非難するこの見解は、米国が航海の自由など、中国にも利益をもたらす公共財を提供していることを無視している。

 また、中国国防白書は、米軍が中国とより密接な関係を持ち、米軍の能力などに関する透明性を示そうとしたことを無視している。米国は中国側に防衛施設を見せてきたし、来年はリムパック演習にも参加させる。しかし、中国は相互主義を果たそうとしない。台湾への武器売却などを理由に、軍事交流は止めるし、米国の軍指導者に中国軍施設を米国ほど見せていない。米国防総省と中国国防部とのホットライン設置にも関心を示さず、海上事故防止協定にも署名しない。

 白書は、尖閣諸島問題で騒ぎを起こしていると、日本を非難している。真実は、日本の国有化以来、中国は中国海監の船を、日本の施政権下の海域に入れ、火器管制レーダーを自衛艦に照射し、戦闘機も出している。

 先月中国がマレーシア水域に入ったことからも、ベトナム、フィリピンとの対立姿勢を変える意図は、中国の国防白書からは見えて来ない。


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