この違和感は何だろう? 兆候は唐家璇中日友好協会会長の訪日延期に在ったように思う。日中関係改善を模索していた中国に変化が見られたのだ。2013日3月10日付の日本の新聞は、唐家璇氏の3月下旬の訪日予定を報じたが、同12日の中国外交部定例記者会見で華春瑩報道官に「新日中友好21世紀委員会の会期は決定していない(唐氏の訪日日程は決定していない)」と否定され、同24日には日本での「唐家璇氏の訪日延期」報道に至る。
唐氏訪日延期の理由に関しては、日本政府の中でも異なる言い分が有るようだ。一部は「東日本大震災追悼式」での台湾の扱いに抗議するため、一部は安倍首相が会見を拒否したからだと言う。いずれにしても、習近平主席は、この「唐氏訪日延期」と前後して、対日関係改善から強硬路線継続に舵を切ったように見える。中国から見れば「関係改善を必要とする中国の足元を見る」日本に見切りをつけたということなのだろうか。
中国の対日強硬姿勢継続の背景には、米中関係についての中国の認識の変化があると考えられる。中国は、まだ対日強硬路線を採り続けても、米中戦争には至らないという自信を得たのではないか。
米中戦争の危険を孕む
東アジアの2つの問題
もともと、中国が日中関係改善を必要とした理由の一つは、尖閣諸島付近での活動の手詰まり感だと考えている。中国は、日本との領土問題で、譲歩も軍事力の先制使用も出来ないからだ。日中が戦争状態になれば米国が自動的に参戦することを中国は百も承知だ。そして両国軍の装備を比較するだけでも、米軍の圧倒的優位は明らかだ。敗戦は中国共産党統治を揺るがす、正に中国にとって悪夢なのだ。
尖閣諸島周辺で中国がとり得る行動は既にほぼ全てとられている。しかも、その活動は中国国内で大々的に報じられている。同じ活動を続けるだけで状況に変化がないという国内の不満は、中国指導者が最も恐れる政権批判の方向性を内包する。米中戦争回避のために活動を現状で抑え、かつ国内の不満をかわすために、中国は日中首脳会談を必要としていた。首脳会談は、日中指導者の対話による問題解決の姿勢を両国内に見せ、他のレベルの対話を可能にするからだ。中国は、首脳会談を許す“積極的な雰囲気”を国内に作り出す努力を続けていたのだ。