実際、北京にある日本料理店の関係者に話を聞いてみると「おまかせを注文する人の多くが日本人ではなく中国人ですね。金額は予算をオーバーしてもいいから、とにかく、その日いちばん美味しいものを、という感じで、お金に糸目をつけないです。
それに、もともと中国人は店員や店主と、友だち感覚でコミュニケーションすることが好き。会話を楽しむ中で、『今日はこういう珍しい魚が入っているよ』などとこちらが言えば、とても喜びます。自分だけがそれを提供してもらえるということで、プライドをくすぐられるし、満足感もより大きくなるでしょう。会話のキャッチボールが好きな彼らに合うスタイルが、おまかせというスタイルなのだと思います」という。
高級中華料理店でも広がる
おまかせの料理であれば、SNSに投稿しても、周囲の人と差別化できる。同じ料理の写真を撮る人は少ないので、自慢もできる。
もちろん、自分が苦手な食材を避けてくれたり、自分が好きな食材をたくさん使ってもらったりすることも可能だ。接待なら、取引先の希望を事前に伝えることもでき、ビジネスの役にも立つという、一石二鳥ならぬ、いくつものメリットがあるのだ。
このような理由から、このところ急速に流行しているのが日本料理店での「OMAKASE」だが、中国のSNSを見ていたら、最近では高級中華料理の店でも「OMAKASE」を取り入れるところが出てきた、という記事を見つけた。
その人のための特別料理、というふうに考えれば、中華料理でもフランス料理でも「OMAKASE」は可能だろうが、日本語由来の言葉が、このような形で中国の飲食業界に影響を与えていると思うと、興味深い。
日本政府は4月5日から、中国からの渡航者に対する新型コロナの水際対策を緩和した。これまで義務づけられていた出国前72時間以内の陰性証明が、3回以上のワクチン接種を条件に不要になったことで、より日本に来やすくなった。
これから本格的な観光シーズンに向けて、中国からの訪日観光客は増加することが予測されるが、中国人客を呼び込みたい日本のインバウンド市場にとっても、中国で起きているトレンドや変化は見逃せない動きではないだろうか。