三つ目の理由はメディアの影響だ。中国でも日本のドラマ『深夜食堂』や『孤独のグルメ』などが流行っている。SNSの動画などで日本のグルメ番組を紹介したり、在日中国人インフルエンサーが日本の珍しい食べ物を紹介したりすることも多く、日本の食そのものへの関心が高まっていることだ。
これらの理由により、日本料理店が急増し、そこに足繁く通う中国人が増えた。中国のグルメアプリ『大衆点評』を見ると、「日本料理」のジャンルには、ラーメン店やお好み焼き店、居酒屋なども含まれており、それらの専門店が増えるなど、細分化も進んでいる。
特別感、ステータス、接待に活用も
そうした中、なぜ、「おまかせ」というスタイルが人気になっているのか。
明確な理由はわからないが、複数の人に話を聞いてみると、前述の金額でもわかる通り、日本料理の高級化が関係しているようだ。
上海に住む日本人に聞いてみると、少し贅沢な日本料理はコースで800元(約1万5000円)以上はするという。もう少し高級になると、1200元(約2万2800円)以上となり、2000元(約3万8000円)以上のコース料理を提供する日本料理店もあるという。
こうした傾向は北京、広州、杭州など各地の大都市でも起きている。中国人の間に、美味しい日本料理を食べたいという需要だけではなく、高級店に行くなら、日本の高級店で日本人がやっているのと同じように「おまかせを注文してみたい」という欲求があり、それが自然に広まったのではないか、とその日本人はいう。
むろん、現地の料理人の腕が上がっていて信頼できること、そして、日本料理に使用する食材が以前より調達しやすくなり、比較的鮮度のよいものが手に入るようになってきたこと、なども関係しているだろう。
前述の『大衆点評』では「北京 日料(日本料理) OMAKASE」などのワードで検索する人も多く、おまかせは、主に高級日本料理店で流行っている。
そうした店に行くのは、主に中国人富裕層で、接待などでも利用する。彼らにとって「OMAKASE」を注文することは、その店の常連である証拠だ。初めて行く店で「OMAKASE」を注文することは少ないだろうから、ある意味でステータスであり、特別感があるという。