たしかに、ブレジネフ時代は、1970年代の二度の石油ショックによる石油価格高騰時代であり、共産主義経済は1960年代に既に行き詰まっていたにもかかわらず、世界最大の産油国であるロシアは、石油収入のお蔭で、米国と張り合う軍事大国となっていました。そして、ソ連邦の解体は、1986年の逆オイルショックとゴルバチョフのペレストロイカを待たねばなりませんでした。
石油収入が現イラン体制、特に革命防衛隊を支えていることは、指摘されているところです。それは、裏から言えば、石油の高価格が続く限り、イランの現体制も、ソ連の例のように、存続できるということにもなります。
イランの将来は、今回のロウハニの選出に関するほぼ全ての論評が言っているように、改革、自由を希求する民意と、ハメネイの神権独裁政治との綱引きであり、どちらが強いと判断するかによって、楽観論と悲観論に分かれます。
ただ、将来の見通しとして、一つだけ確実と思われることは、オバマ政権が今回の選挙結果を前向きにとらえて、ロウハニ新政権との話し合いによる問題解決の方向に傾くであろう、ということです。また、今年一杯は、たまたま、米国では選挙の無い年であり、ユダヤ・ロビーにそれほど配慮しなくても済みます。
まして、6月の米中首脳会談の結果から見ても、米中関係は進展する見込みはなく、ロシアとの核軍縮も容易には進みそうもありません。そうなると、オバマ政権がイラン問題の解決に活路を求める可能性は大きいでしょう。とすれば、少なくも今年一杯は、イランをめぐる軍事的危機は遠ざかった、という情勢判断が許されると思います。
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