核兵器製造疑惑の晴れないイラン。6月14日には大統領選挙を控える。現時点で核兵器製造の決断はまだ下していないと米国は見るが、1期目で核開発協定の交渉が不調に終わった米オバマ政権は、再度挑戦を試みる。イランの高官や知識層、聖職者に数多くインタビューを重ね、米国有名メディアでもレギュラー解説を務める専門家が提示する米国の「次の一手」。
米国の政府関係者は、現時点でイラン政府はまだ核兵器製造の決断を下していないと考えている。
オバマ大統領は1期目に、イランを爆撃するか、イランが核爆弾を手に入れるのを容認するかという二者択一を迫られたら、前者を選ぶことを明確にした。
しかし、イランへの軍事攻撃が、世界経済や地域の安定、米国の国際的な地位、さらには大勢のイラン国民に与える莫大な悪影響を考えると、オバマ大統領はこの結果を避けるためにあらゆる努力を払うだろう。
イラン政府と核開発に関する暫定協定を結ぼうとするオバマ大統領の1期目の取り組みは不成功に終わったが、オバマ政権は潜在的に莫大な軍事行動のコストを考慮し、もう1度これに挑戦しようとしている。
米国のアプローチを 拒んだハメネイ
オバマ大統領は、1979年のイラン革命後のどの米国大統領よりも、米国とイランの関係の基調を変えようとしてきた。就任演説では、明らかにイランに言及し、「あなた方に握り拳を緩める気持ちがあるなら、我々は手を差し伸べる」と述べた。2009年3月19日にはイランの正月「ノールーズ」を祝い、イラン国民と「イラン・イスラム共和国」の指導者に宛てた挨拶のビデオを作製した。この呼称は、イランの政体の性質を認める、微妙ながらも前例のない発言だった。
さらに、オバマ大統領はハメネイ師宛てに2通の私信を書き、米国は和解への道を開く信頼醸成プロセスに関心があるとはっきり伝えた。
これに対し、ハメネイ師は米国の期待を打ち砕いた。ハメネイ師は、オバマ大統領のスローガンである「チェンジ」は単なる戦術転換に過ぎないと嘲り、米国が歴史上イランに対して取ってきた「傲慢で横暴な」不当行為を並べたて、オバマ政権に一方的な譲歩措置を取るよう求めた。
09年秋になると、シーア派の聖都コムの外れに位置するフォルドゥの山中(空爆から施設を守るための立地)に秘密のウラン濃縮施設が存在することが明らかになり、イランの核開発に関する疑念が強まった。