蔡・マッカーシー会談に引き続き、米下院外交委員長マコーネル率いる米超党派議員団が台湾を訪問し、台湾軍への訓練に協力することや迅速な武器提供の意向を示した。同氏は「下院外交委員長として、自分は対外軍事物資売却に署名しており、台湾への武器売却を確約する」と述べた。
台湾のメディアや人々の間では、最近の一時期に、いわゆる「疑米論」が盛んに論議された。それは、いざという時、米国は果たして台湾を支援してくれるのかという議論である。米国は、いざとなったら台湾を見捨てるのではないかという米国への疑問を持つ考え方である。マッカーシー、マコーネルたちの武器提供を含む台湾支援の明確な意思表示は、この「疑米論」を強く否定するものとなっただろう。
野党・国民党には「微笑み外交」を展開する中国
台湾では来年1月の総統選挙に向け、民進党、国民党など与野党の駆け引きが活発化してきた。馬英九・前国民党総統の中国訪問は、蔡英文総統の米国訪問とほぼ同じ時期に行われたが、両人の外遊は両党の違いを鮮明にした。馬英九は中国共産党員らと融和ムードを演出し、「一つの中国」原則を認め、中国との対話を回復することが台湾への利益になると主張した。これは、自由と民主の価値観を共有する国々との連携を深め、中国との統一を拒絶して現状維持路線をとる蔡英文民進党政権と対照的である。
中国は台湾に対し硬軟両様の構えであり、民進党に対しては軍事力をもって威圧しつつ、他方、国民党に対しては微笑み外交を用いることで台湾人を引き付けようとしている。中国の台湾懐柔の情報戦・心理戦は今後ますます激しさを増すものと思われる。
中国軍は、蔡・マッカーシー会談への「対抗措置」として、台湾を取り囲む軍事演習をおこなった。中国の戦闘機71機が台湾海峡の「中間線」を越え、台湾周辺海域には艦船9隻が確認されたという。また、中国の新しい空母「山東」が、初めて西太平洋での訓練に参加した。このような「軍事演習」は、昨年夏のペロシ下院議長の台湾訪問の際に、中国軍が行った「軍事演習」、特にミサイル弾道弾発射訓練を想起させる。その時、5発のミサイル弾道弾が日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。
今年に入ってからも、尖閣諸島周辺での中国公船による領海侵犯の最長記録の更新や、南西諸島での中国軍艦等の不穏な動きもあり、「台湾有事は日本有事」の緊張感は増している。