台湾の蔡英文総統が南米2カ国と、経由地米国の10日間の訪問を終えて4月7日夜、同空港に戻った。同日、台湾の野党、国民党の馬英九前総統が12日間の中国本土の旅を終え7日昼、同空港に帰還した。蔡総統が中国の圧力に屈しない姿勢を強調する一方、馬前総統は「一つの中国」を繰り返し、中国をめぐる与野党のベクトルは真逆だ。
それぞれを高く評価する声がある一方、蔡総統が、米国で連邦議会下院のマッカーシー議長ら反中国のタカ派とばかり会談し、台湾のイメージ悪化につながるとの批判が出た。馬前総統は、江蘇南京や重慶で日中戦争の遺跡訪問を繰り返し、元民進党の立法委員で政治評論家の林濁水氏からは「親中抗日の旅」とやゆされた。
中国軍演習開始で面目丸つぶれ
中国軍・東部戦区は、蔡総統と馬前総統が帰国した翌8日から10日、環台湾島(台湾本島を囲む)戦備パトロールと「利剣」と名付けた合同訓練を早速始めた。台湾国防省によると、9と10の両日は航空機延べ70~71機が殺到。35機~45機が台湾海峡中間線を越えて台湾側の空域に侵入した。また、艦艇9~11隻が台湾周辺を航行した。
馬前総統が「一つの中国」を再三強調し、中台は「家族のように親しい」と繰り返し語った直後の軍事演習で、馬氏と国民党の双方が面目を失ったとの指摘も、複数の台湾メディアが指摘した。
ただ、中国本土の専門家は、軍事演習はあくまで蔡総統に向けたものと指摘。「中台のしこりは、中国共産党と政権党の民進党の間にこそある。中国が演習を行うのは、民進党と米政府への警告だ」と述べた。
軍事演習により、むしろ国民党の株が上がるとの指摘もある。台湾メディアの風伝媒によれば、台湾の国家安全会議の元諮問委員で、政治大学東亜研究所の邱坤玄名誉教授は、「危険が高まるほど、話し合いの必要は高まる。民進党は米国だけだが、国民党は米国、中国の両方とうまく付き合える」と述べた。