台湾有事に備え、米国は台湾に近い同盟国フィリピンとの関係強化に乗り出し始めた。さらにワシントンでは、対中国抑止力強化を前提に日本を加えた「日米比トライアングル」関係構築にも関心が高まっている。
繰り返される米比での会談
昨年6月、フィリピン大統領にフェルディナンド・マルコス大統領が就任以来、米比間の急接近ぶりが目立っている。
反米姿勢が目立ったロドリゴ・ドゥテルテ前大統領とは対照的に、マルコス大統領は同年9月には、最初の外遊先として、訪米に踏み切った。中国に気を遣い「国連総会出席」が表向きの理由だったが、最大の目的は、ホワイトハウスでのバイデン大統領との初の首脳会談に臨むためだった。
共同声明によると、同首脳会談では、①米比関係の重要性を相互確認、②米国は揺るぎない対フィリピン防衛コミットメントを約束、③両首脳は(台湾を含む)南シナ海情勢を協議し、航海・飛行の自由確保と地域紛争の平和的解決の意義を強調した――ことなどがうたわれた。
しかし、両国関係改善により大きな力点を置いてきたのは、南シナ海における中国の軍事威圧を警戒するバイデン政権の方だった。とくに、前政権時代にぎくしゃくしたフィリピンとの安保取り決め「米比相互防衛条約」(MDT)体制の立て直しと再確認が急務となった。
そこで、バイデン大統領は去る2021年7月、まず、ロイド・オースティン国防長官をマニラに派遣、同長官は「MDT調印70周年」記念式典に臨むと同時に、ドゥテルテ氏との会談で、「MDTが果たすインド太平洋安保における両国関係の中心的役割」を力説した。
続いて、マルコス政権発足直後の翌22年8月には、アンソニー・ブリンケン国務長官がマニラを訪問、マルコス大統領から「相互の緊密な関係抜きにMDTは存続し得ない」との言質を得た。同年11月には、カマラ・ハリス米副大統領が訪比、マルコス大統領との会談で、23年春にも、両国が外務・国防の閣僚会議「2プラス2」を、7年ぶりに開催することで合意している。