2024年4月26日(金)

バイデンのアメリカ

2023年3月18日

日本も加えた協力体制も

 一方、米比間の動きとは別に、台湾有事に備えた日本を加えた「日米比トライアングル」安保協力体制構築についても、関心が高まりつつある。

 このうち、日比間の最近の動きについては、①昨年4月、東京で外相・国防相による「2プラス2」初会合が開催され、自衛隊とフィリピン軍部隊相互交流促進のための合意に向けた協議を続けることで合意した、②同年12月には、両国部隊間相互演習の一環として、わが国の航空自衛隊F-15戦闘機2機が戦後初めてフィリピンに派遣された――などが挙げられる。

 こうしたことを踏まえ、ワシントンの有力シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)は今年2月1日、日米比3カ国の戦略的連携強化の重要性に焦点を当てた「日米比トライアド構築についてBuilding a US-Japan-Phillippines Triad」と題するブリーフィング・ペーパーを公表した。

 その中で、具体的に以下のような9項目からなる緊急提言を行っている:

① 中国が南シナ海、東シナ海において繰り返し行っている「グレーゾーン」の挑発的行為に関し、日米比3国が一貫しかつ協調した理解を深める必要がある。同時にこうした国際法上許しがたい行為についての3国共通したメッセージ発信に取り組むべきである

② 日米両国はこれら海域における中国の諸活動を近隣諸国が速やかに把握できるよう、東南アジアおよびインド太平洋パートナー諸国の遠隔監視能力向上のための投資を継続して行うべきである

③ 3国はこうした「グレーゾーン」行為による中国側のコストをより高価なものにさせるため、関連情報共有および発信のためのメカニズムを強化すべきである

④ フィリピンにとって、南シナ海における海洋安保および航行の自由確保のための十分な軍事・法執行能力は死活的に重要だが、遺憾ながら同国の財政上の能力は限られており、エスカレートする中国側の挑発行為に対処するだけの軍事能力も不足している。この点で、日米両国はフィリピン軍および警備当局のための能力強化を加速すべきである

⑤ 日米両国はフィリピンに対し、中国側の動きに対応した抑止能力向上のための対艦・対空・無人機配備などを含む打撃能力確保を促すとともに、それをスピードアップさせるべきである

⑥ 3国は、戦力近代化、緊急時プランニングに関するより頻繁な対話の道を開くべきである

⑦ 台湾有事の際に、フィリピン国内に「中立」の立場を求める動きが出ることが予想されるが、政治的、戦略的および地政学的見地からみて同国は日本同様に紛争に巻き込まれる可能性の方が高い。こうした点を踏まえ、日米両国は、フィリピンが中国側による「中立への強要」に対する執拗な抵抗を支えられるよう、より一層の経済的支援に乗り出すべきである

⑧ 米比両国は南シナ海以遠における相互防衛義務についても理解を共有する必要がある。この点で、米国は対比防衛義務があるのは当然だが、その逆も同様であり、本年前半にも公表予定の同国新防衛ガイドラインは重要な一歩となる

⑨ 米比両国は軍事協力のみならず、それを幅広い分野に広げる必要があり、とくに米国は外交・経済面でのさらなる協力に投資すべきである。さらには、フィリピンに対してのみならず、近隣諸国ともエネルギー、重要金属サプライチェーンその他の分野における関係拡大を視野に入れるべきである

 なお、CSISは、これら「緊急提言」について、昨年9月、東京で開催した「3国間戦略対話」を踏まえたものであることを付記しており、すでに日米比専門家の間で、台湾有事に備えた具体的な意見交換がスタートしていることを示している。

 今後、政府レベルで本格的な協議がスタートするのも、時間の問題となろう。

   
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