2024年4月15日(月)

バイデンのアメリカ

2023年3月18日

フィリピン国内基地に米軍受け入れ

 こうした米側のフィリピンに対する一連の精力的な取り組みは、冷戦終結以来、初めてであり、極めて異例だ。その背景にあるのが、最近、切迫度を増す台湾有事に備えた同国の地政学的重要性にほかならない。 

 そこで、オースティン国防長官は去る2月2日にも改めてマニラに向かい、ガルベス比国防相との協議を通じ、①米軍による比国内5軍事基地の拡充・補強、②さらに新たに別の4基地への米軍アクセス、③両国軍による合同軍事演習の充実――などからなる合意にこぎつけた。

 米軍当局が「画期的」と位置付けた今回合意の中で、とくに関心を集めているのが、新たに米軍部隊受け入れの約束をとりつけた4基地のうちのカガヤン、イサベラ、ザンバレス3基地だ。これらはいずれも、台湾に近いバシー海峡に面した同国北部最大のルソン島内にあり、台湾防衛に当たる米軍部隊展開上、きわめて重要な役割を担うと見られている。

 英「Economist」誌は先月、こうした両国間の最近の一連の動きに関連して「フィリピンの台湾への至近距離が西側戦略の中心になる」との見出しを掲げた以下のような解説記事を掲載している:

 「米中大国間競争がアジアの地政学再編を促す中で、西側によるフィリピンへの新たな照準が際立っている。1150万の人口しかない島嶼国で富裕とは言えない同国は、自国防衛の予算もわずかしかなく、昨年までは、反米ポピュリストの大統領に統治されてきた。しかしその後、親米派のマルコス氏が後継者になって以来、台湾の玄関先に位置し、永年の米国との結びつきを持つ同国は、西側戦略にとって中心的存在となった」

 「早速、オースティン米国防長官は今月、2度目の同国訪問により、『2014年両国間防衛協力強化協定』(EDCA)に立脚した新たな協定締結にこぎつけた結果、フィリピン国内の合わせて9カ所の基地への米軍アクセスが認められることになった。今回の合意内容には、同国2大基地であるクラーク、スービック両基地は対象外となっているものの、台湾沿岸からわずか400キロメートルに位置するルソン島北部カガヤン州内の2基地が含まれていることは特筆すべきである」

 「同じく台湾に近いものの防衛・補給に難点のある日本の南西諸島とは異なり、これらの基地は米国および同盟諸国戦力にとって台湾への最も近い出撃地点の役割を担うことになり、ペンタゴン高官も『米軍は今回、新たな基地使用が可能となったことで、インド・太平洋およびフィリピン海域におけるさまざまな挑戦に即応できることになる』として、その意義を高く評価している」

 ルソン島の上記2基地については、インド・太平洋軍事戦略に詳しい米ランド研究所のジェフリー・ホーナン上級研究員も、米政治メディア「The Hill」に対し、「もともと台湾防衛に関しては、米国は、〝ホームチーム〟である中国に対し、自分たちは〝アウェイ・チーム〟で極めて困難な戦いを強いられる立場であるだけに、フィリピン北部の基地が新たに利用できることになれば、戦略的に特に重要な意味を持ち、劣勢を挽回できるだけでなく、中国に対しても、強いシグナルを送ることになる」とのコメントを寄せている。

 ただ、フィリピン国民の間では、今回の米比合意によって、自国が直接戦争に関与することへの不安と警戒心も少なからず存在する。

 このため、オースティン国防長官も合意発表の際の記者会見であえて、「われわれは今後、フィリピン国内での米軍独自の基地設置を認められたわけではなく、あくまで、フィリピン側の基地を巡回ベースで利用することを意味している」と補足説明し、フィリピン軍の直接参戦の可能性については直接言及しなかった。


新着記事

»もっと見る