第2次安倍晋三政権発足後、岸田文雄外相の最初の外国訪問先は、今年1月に訪れたフィリピンだった。岸田外相は、フィリピンと日本は戦略的パートナーシップを強化する必要があると述べた。この流れに沿って、日本はPCGによる訓練強化、通信システムの改善、装置のアップグレードを支援することを約束した。今後2年内にPCGに移転される多目的船10隻は日本の資金で賄われる。両国が直面する状況を認識するフィリピンは、日本の「再軍備」に関する提案を支持した。
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フィリピンと日本がともに直面する戦略的状況は、両国間で進む戦略・防衛協力を拡大させる大きなきっかけになった。両国政府が現在行っている協力のレベルは、日比関係の歴史上、例を見ないものだ。
では、現状から踏み込み、安保関係をさらに強化する余地や理由はあるだろうか。東アジアにおいて両国が共有する状況を考えると、フィリピンと日本の戦略関係は維持すべきである。だが、現状の枠を超えて関係を強化すれば、非常に危険な領域に足を踏み込む。というのも、両国の関係強化が中国に向けられていることを否定するのは難しいからだ。
日本の海洋巡視船が南シナ海で活動すれば、中国がこれを挑発以上の行為と見なすだけではない。他の東南アジア諸国は恐らく、日本と中国の対立関係を東アジアの玄関先に持ち込む行為と見なすだろう。日比安保協力の強化は今後、外交努力に向けられるべきだ。特に、係争中の領土・領海を巡る当該国の行動規範の制定に向けて努力すべきだろう。
ASEAN諸国は長らく、南シナ海の問題をカバーする行動規範の採用を求めてきた。中国が署名する形で行動規範が完成すれば、現在の地域内の緊張がさらに危険なレベルにエスカレートする可能性を小さくするうえで大いに役立つだろう。同時に、東シナ海の状況を規定する同様の取り決めの雛形になるはずだ。
南シナ海と比べた場合の歴史的背景の違いと力学の違いを理解したうえでも、平和的な関係へ向けた持続的な道筋を見つけるためには、やはり、古くに確立され、維持されてきた立場を超えて物事を考える必要がある。日比協力関係は今後、これを念頭に置いて、その協力の矛先を向けるべき新たな針路を見いださなければならない。
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