今般の日台漁業協定調印について、協定は、日台双方の利益になるものであり、中国に対して法的解決という武器で対抗していこうという傾向の表れでもあろうと、専門家のコメントを引用しつつ、4月13日付Diplomat誌掲載の論説で、フリージャーナリストのデヴィッド・コーエン(David Cohen)が指摘しています。
すなわち、日台間での漁業協定は、暫定的なものではあるが、領有権問題の解決が長引いている中で、東シナ海におけるダイナミクスを変えるものである。それは、日台間での摩擦の主要な原因を取り除く一方で、領有権問題での外交的孤立と台湾の外交的地位の向上を恐れる中国政府にとっては厄介なことである。
漁業協定調印は、日台双方にとって大きなアドバンテージをもたらす。台湾の漁民の操業範囲を大きく拡大することで、台湾経済にとって利益となり、馬英九総統や呂秀蓮前副総統が提唱したような、共有の合意に向かって踏み出すことになる。
日本は、台湾漁民からの度重なる抗議に対応する必要がなくなるであろうし、尖閣問題で、台湾を日本の側に引き付けることになろう。
北京から直ちに出てきた反応は、台湾の地位についてのものであった。中国外務省からのコメントは、「一つの中国」政策を尊重することへの日本のコミットメントを思い出させようとするものであり、環球時報は、「尖閣問題を巡っては、中国と台湾の間で、オープンな協力関係はなかったが、暗黙の了解は確かに存在した。島の主権を守ることについての、中国の強い姿勢は、台湾の日本との交渉における地位を疑いもなく高めたはずだ」として、台湾は恩知らずであると批判した。
協定は、中国が自国を台湾の権利を保護する者と位置付けることのできる、数少ない問題を、中国から奪ったことにもなる。
尖閣については、もはや、中台協力の機が熟しているとは思えない。台湾の沿岸警備隊の長は、台湾の船は、日本が中国のトロール船を係争地域に入れないことを助けると言い、中台の緊張を高めた。
中国は、尖閣に対する自国の主張についても心配する理由がある。もし、日本と台湾が妥協に至れば、日台は、中国を、問題解決を妨げる勢力と位置付け、国際的支持を勝ち取ることができるかもしれない。
フィリピンによる南シナ海における国際調停の要求とともに、今回の協定は、中国を領土問題で排除する可能性がある。中国法の専門家である Jerome Cohenは、これらの二つの件は、中国に圧倒されることを懸念する東アジアの国々が、国際法を武器として使う傾向を示している、と言っている。