2024年12月7日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年5月8日

 Cohen は、日本の当局者が、ここ数か月、尖閣問題をICJ(国際司法裁)に持ち込むという考え--それは、日本に紛争の存在を認めるよう要求することにつながるので、ありえそうもないことだが--を浮上させている、と言っている。Cohenは、中国は、ソフトパワーを高めるべく、ICJやUNCLOS(国連海洋法条約)を尊重すると言っているので、国際法を用いると脅すことは、中国を抑えることになるかもしれない、と言っている。

 国際法に訴えることは、日本に、主張している領土を失わせるリスクがある。しかし、今回の合意は、国際法に訴えるということが、今の日本の指導者にとって魅力的であることを示している。彼らは、尖閣を日本のものとして守り通すことよりも、中国の手に落ちないことに、より関心があるのかもしれない、と論じています。

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 日台漁業協定の調印は、たしかに、近来にない朗報です。

 もちろん、日本側の漁業関係者説得の努力も評価すべきであるが、台湾政府が決断したということの持つ、台湾の対中政策へのインプリケーション、そして、噂されている、背後の米国の影響力など、日、台、中、米関係にとって、画期的な成果だったと言えます。

 これが南シナ海、東シナ海の問題の法的解決へのはずみになるという、この論文の論理はやや飛躍している点はあるでしょうが、中国との間の仲裁裁判を提案しているフィリピンなどを勇気づける効果はあるでしょう。

 尖閣については、裁判では中国が負ける公算が大きいので、中国がICJの裁判を受諾する可能性はほとんど無いが、もし中国が提訴するならば日本は受けて立つ用意があるという態度を示すことは有益であると思われます。

 尖閣の防衛問題は、いずれは、日米の防衛協議の中で具体的に取り上げざるを得ない問題ですが、米側のコミットメントを得るために、ICJ提訴に応じる日本の姿勢は、日本の道義的立場を強める効果があるでしょう。また、もし中国側の権力体制が固まって、日本との間に妥協を成立させることが可能なような政治情勢が中国国内で生まれた折には、中国側は、「日本が係争の存在を認めた」と国内説得用に使えるかもしれません。日本側はそれに同調する必要は無く、領有権を主張し続けていれば良いのです。

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