2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2013年7月25日

 アキノ大統領は、近代化計画には、17年までに新型フリゲート艦2隻、対潜水艦戦能力を備えたヘリコプター2機、沿岸警備用の高速船3隻、水陸両用強襲車8台の購入が含まれていると述べた。すべてが計画通りに手配されたとしても(遅延が生じる可能性は極めて高い)、フィリピン海軍の能力強化に向けた取り組みは、実を結ぶまでに5年かかる。

 それより迅速に効果を発揮できるのは、米太平洋軍とAFPの協調、協力の拡大だ。米戦略国際問題研究所(CSIS)が11年6月23日にワシントンで開催した会議で、フィリピンのアルバート・デル・ロサリオ外相は「米国は今もフィリピンにとって一番の戦略同盟国だ」と強調し、フィリピンと米国の関係をリセットすることが「同盟関係が国内の目標を果たすとともに、世界の安定に貢献し続けるうえで不可欠になった」と指摘した。

 公式声明では、中国に向けた措置ではないと明言されているものの、この2年間、フィリピンを訪れる米国の軍艦の数が増えている。軍艦には空母や攻撃型原子力潜水艦も含まれている。フィリピンは、米国によるアジアへの「ピボット(旋回)」の発表を歓迎し、フィリピンへの米軍の定期ローテーション配備に向けて準備を進めている。

 また、フィリピンにとって米国は、海軍の各種装置や軍装備品の主たる調達先でもある。フィリピンは既に、退役後に修復された沿岸警備用ハミルトン級カッター1隻の引き渡しを受け、2隻目の最終納品を待っている。どちらもミサイル配備能力は持たないが、2隻目はミサイル配備用に改造されていると伝えられている。

 しかし、米国との関係は南シナ海でいざという事態が生じ、フィリピンの安全保障が脅かされる状況になれば、米国はフィリピンを支援するという「期待」に基づいている。この点は、日本の場合と異なる。尖閣諸島に対する日本の支配が脅かされた場合、米国は日本を支援することに完全にコミットしている。

 それでも、南シナ海、東シナ海双方において中国が強硬姿勢を強めていることは、フィリピンと日本を非常によく似た難局に立たせている。

 このところ、フィリピンと日本の間では安全保障協力の強化を模索すべきだとの意見が出ている。どちらも米国の同盟国であり、たとえ非公式なものであろうと、3カ国間の安保体制を確立することはできるはずだ。そうした体制の模索を促す共通の懸念材料は確かに存在する。

史上最高水準に達する日比安保協力

 フィリピンと日本は12年7月に、向こう5年間を対象とする防衛協力拡大に関する合意文書に署名した。合意内容は、AFPと自衛隊の軍事交流、フィリピン海軍と海上自衛隊の相互訪問、内外の安保問題に関する会合の実施、防衛技術、知識共有、海洋安保に関する問題、情報交換などをカバーしていた。また、合意文書は、AFPの平和維持活動(PKO)センターと日本の防衛省統合幕僚学校国際平和協力センターとの協力拡大を明記している。


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