2024年4月25日(木)

パラアスリート~越えてきた壁の数だけ強くなれた

2013年7月30日

「枠」を超えるスポーツの力

 現アンプティサッカー日本代表監督の杉野正幸氏は語る。

日本代表監督の杉野正幸さん(右)とエンヒッキさん(左)

 「現在この競技をやっている国と地域は28です。2年に一度世界大会が開かれるんですが、3大会を通じてウズベキスタンが優勝しています。彼らはアフガニスタン紛争の負傷兵たちです。世界的に見て強豪国と言われるのは軍隊のある国です。彼らは元々軍人なので身体ができているんですが、日本の場合は病気や不慮の事故で手足を失った方がほとんどでしょう。どうしてもすぐにスポーツをしようという意欲が湧かずに、再びスポーツを始めるまでにブランクが空いてしまうんです。昔はやっていても10年~20年くらいのブランクが空いてしまう選手もいます」

 「こうした背景を考えると世界の強豪国とは体力的な差があるのは仕方がないところではありますが、それでも国内では5チームが活動するまでに増え、広島では医療関係者が選手募集をしてチームを作るという6チーム目が出来るところです。選手たちはこの競技と出合って人生が変わったというのがほとんどです。それもエンヒッキ選手が日本に持ち込んだからこそなんです。彼の功績はとても大きいですよ」

 この杉野もエンヒッキが来日し、ブラジル銀行に勤めた縁でアンプティサッカーに出合っている。それまで約10年間知的障害者のサッカーを指導していて「今度いっしょにボールを蹴りませんか」とエンヒッキを誘ったことがキッカケだった。

 エンヒッキも「ぜひやりましょう」と知的障害者たちに交じってプレーしたころ「サッカーの楽しさに違いはない」といっしょに試合にも出場した。

 サッカーの楽しさはブラジルも日本も同じである。また障害の違いや、健常者、障害者の違いにかかわらずサッカーの魅力は世界共通なのである。

 エンヒッキも杉野もスポーツには容易に「枠」を超える力があることを改めて知った。今後はアンプティーだけではなく、健常者や他の障害者も混成した大会を開こうという準備を進めている。

「みんなといっしょにサッカーがしたい」

 元アンプティサッカーブラジル代表であり、現アンプティサッカー日本代表 エンヒッキ・松茂良・ジアス。

 1989年、父親はブラジル人、母親は日系ブラジル人の長男としてブラジルのサンパウロに生まれる。


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