2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年8月12日

 中国は、既に中央アジア諸国とパキスタンの最大の貿易相手国であり、これらの国々に大きな影響力を持っている。この影響力は今後大きくなる一方で、中国がいま東南アジア諸国に行っていると同様、中央アジアとパキスタンに対し経済的、政治的に意思を押し付けることができるようになるだろう。その場合、中国国内のウィグル族にとどまらず、中央アジアとパキスタンのイスラム教徒を敵に回す可能性がある。

 中国がトップダウンの大規模開発計画方式を劇的に変えない限り、新彊での暴動は続くであろうし、同様の暴動は、中国が事実上の支配勢力となり、地域のイスラム教徒の必要を理解できない中央、南アジアでも今後起こりうることである。それは、中国と西側の隣接諸国の安定に劇的な影響を及ぼすかもしれない、と論じています。

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 チベットと新彊ウィグルが、中国の二大少数民族問題ですが、チベットは、チベット仏教という世界的な文化遺産があることと、ダライラマの存在で、より世界の注目を集めています。他方、新彊ウィグル地域については、論説も指摘する通り、中国が新彊を開発して中央アジア、パキスタンを自己の勢力圏に取り込むための基地としての可能性を秘めており、中国にとっての地政学的重要性からいえば、新彊ウィグル地域がはるかに重要と言えます。

 新疆、さらには、中国の政策、態度如何によっては、中国が勢力圏に取り込もうとしている中央アジアやパキスタンも中国に対しイスラムの反乱を起こす可能性もあるというリスクがあるにもかかわらず、中国は、新彊を基地として中央アジア、パキスタンとの経済関係を発展させ、この地域での覇権を樹立するという戦略を今後とも追求し続けると思われます。 

[特集] 中国によるチベット・ウイグル弾圧の実態

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