米ヘリテージ財団のブルース・クリングナー上席研究員が、同財団のサイトに7月22日付で「北朝鮮・キューバの武器の船舶輸送は制裁を厳しくする必要を示している」との論説を書いています。
すなわち、キューバから武器を運んでいる北朝鮮船舶がパナマ当局に拿捕された事件は、(1)北朝鮮が国連制裁に違反していること、(2)国連制裁が北朝鮮経済に打撃を与え、北朝鮮が現金収入を得るために躍起になっていること、(3)国連決議に抜け穴があり、それを直す必要があること、を示している。
パナマ当局は、キューバの地対空ミサイルSA-2とミグ21戦闘機を運んでいた清川江号を拿捕した。キューバはこれらの武器は修繕のために北朝鮮に輸送されていたもので、その後キューバに返させるものであったと認めた。
北朝鮮はこういう密輸に従事してきた。清川江号は国営海運会社に属し、2010年には、ウクライナにおいて麻薬輸送のかどで拘束された。北朝鮮は現金を得る為に武器取引のほか、紙幣偽造、麻薬の製造・配布、薬品偽造などをしている。
キューバ危機時代の古い兵器は脅威にはならないが、この輸送は安保理決議違反である。決議1718号は、戦闘機やミサイルの供給、販売、移転を各国に禁じている。
制裁批判者は制裁に効果がないと言っているが、制裁は有用である。国際社会の態度を示すし、違反者を処罰する。北朝鮮の武力を強化するための技術などの獲得に制約を加え、北の核、ミサイルなどの拡散を妨げる。他の手段と共に、北の行動を変えようとしている。
安保理の専門家パネルは制裁の効果を指摘している。
北朝鮮の今回の輸送は安保理決議違反であるが、国連が意味のある対応をするとは見込まれない。武器は古いものだし、中国は制裁強化に否定的である。
米国は、この事件を理由として、すべての加盟国に制裁実施を求めるべきである。オバマ政権は既存決議の抜け穴を防ぐように主張すべきである。今の決議は、疑いがあっても公海上での北朝鮮船舶の臨検を許していないが、これを出来るようにすべきで、国連憲章41条(非軍事的措置の根拠規定)ではなく、42条(軍事的措置の根拠規定)を制裁の根拠にすべきである。