2024年12月6日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年8月23日

 米海軍大学のホームズ教授が、7月18日付Diplomat誌ウェブサイトで、日本には、防衛計画の大綱を見直し、GDPの2%の防衛力を持ってほしいが、それは、自衛隊の名称変更といった、周辺諸国を無用に刺激することをせずにやって欲しい、と述べています。

 すなわち、安倍政権が、近い将来、防衛大綱を見直すことは間違いないであろう。これに関して、中国人記者たちが、次の諸点についての見解をEメールで問い合わせてきている。平和憲法を改正して自衛隊の地位を普通の軍隊と位置づけ、名称を変更すること、米軍とともに集団的自衛権を行使すること、より能動的な弾道ミサイル防衛を装備すること、南西諸島防衛を重視した兵力の再編をすること、などについてである。

 私(ホームズ)の回答は、日本は、自衛隊の名称変更の問題を除いて、これら全てにおいて前進すべきであり、いかなる憲法改正も、自衛隊が戦略的攻勢に出ることは決してないということを明確にすべきだ、というものである。安倍政権は、米国への依存を減らすためのいかなる国防上のスタンスの変更であっても、その目的を明快に説明しなければならない。特定の選択肢は、前もって控えられるべきである。その意味で、自衛隊は普通の軍隊とは違う軍隊であり続けるべきである。

 これが、私が信奉する、ギリシャの歴史家ツキディデスの、「怖れと名誉と利害関係が人間の行動の原動力である」という格言に沿った回答であると思う。日本の指導者は、防衛大綱と、それを実行に移すための努力が、地域の人々によって、どのように受け取られるか、考えなければならない。東京は、出来るだけ少ない人々の感情を害するにとどめながら、出来る限りの防衛を実現する、ということを目標にすべきである。

 日本は、自由主義的な、米国主導の海洋秩序を守ろうとするような、保守的な力である。自衛隊の態勢を、北朝鮮による先制攻撃に対して北朝鮮の核施設に反撃できるようにしたり、琉球列島への陸海共同攻撃を排除できるように調整することが、アジアにおいて日本が乱暴な行動をすることに繋がると信じている者は、北京が気分を害するのは別として、皆無に近い。日本は、日本自身が大いに利益を受けている現状を破壊する能力を、現時点でも持っていないし、防衛費を大幅に増額したとしても持てないであろうし、そういう意図もない。

 ただ、自衛隊の名称変更は問題である。日本の指導者は、日本が現に陸海空軍を保有しているという事実に合わせること、また、中国に対して日本の決意を示して抑止することを意図しているのであろう。前者は表現上の問題に過ぎないが、後者には、危険な要素がある。


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