2024年11月16日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年7月5日

 シドニー大学のジョン・リーが、6月6日付WSJ紙掲載の論説で、シャングリラで小野寺防衛相が、日本は平和主義を維持しつつ軍事的役割を拡大するとの方針を示したことを、画期的なことと評価しつつ、近隣国の懸念を招かないよう慎重に行うべきである、と述べています。

 すなわち、シャングリラ対話(アジア安全保障対話)で、小野寺防衛相は、日本の軍事的地位と地域における日本の役割について、全く新しい考え方を示した。彼は、日本が平和主義を維持すると明言する一方で、平和主義の意味するところを再定義している最中であることを示唆した。東京は、地域の軍事的バランスと戦略的環境を大きく変えることを望んでいる

 防衛相は、「強い日本」は、経済的に国際社会をリードするだけでなく、地域の安全保障の分野でも責任ある役割を果たすことを約束した。

 日本は、6年ぶりに軍の規模を拡大し、11年ぶりに防衛予算を増額することにしている。ただし、それはシンボリックな0.8%増に過ぎず、GDP比1%未満という自己制約の範囲内である。

 もちろん、注意すべき点はある。負債がGDPの200%に達している国にとって、これら全てを賄うには、継続的な経済成長への復帰が必要である。その意味で、小野寺氏が示した安全保障についての新しい考えは、アベノミクスの成否にかかっている。

 しかし、それは、将来の話である。さしあたって、米国は、同盟国にアジアにおける安全保障上の負担をより多く分担するよう希望してきたのだから、日本の新しい動きを歓迎するであろう。

 米国にとっては、平和と安定を確実なものとし、民主主義の規範を支持し、公開の自由を維持し、法の支配を確かなものとする役割を、日本がより多く果たすことは、全く脅威ではない。しかし、地域の他の国々は、目覚めつつある日本に、興味と懸念の両方を持つであろうし、北京は怒っているかもしれない。

 それゆえ、東京は、新しい戦略について、近隣国を安心させるよう努力しなければならない。まず、日本が、戦略的役割を高めることについて、米国の歓迎を得ることが肝要である。米国は、地域の主要な安定化勢力として、少なくとも中国以外の主要国から広く認識されているので、日本の軍事的復活は、ワシントンとの協力の統合化戦略の一部と見られなければならない。


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