そしてこれらは、2030年までに中国が国外に5カ所の中国軍の拠点を設けるとの「プロジェクト141」と呼ばれる今年4月の州兵により漏洩された機密情報に含まれていた内容とも符合する。米国当局者によれば、すでに2019年からキューバの中国の盗聴施設の強化が行われており、21日付の同紙の報道では、トランプ政権時代から華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の従業員がこの盗聴施設に出入りするのを追跡していたという。
上記の社説では、このような状況を踏まえ米国の鼻先に当たる中国のキューバへの軍事的プレゼンス増大を防ぐ必要があり、通常兵器による軍事的抑止力を強化して外交をバックアップすべしと論じているが、どちらかというと米国政府の軍事支出を促し、もっと強面外交をすべしと、バイデン政権に活を入れる点にポイントがある印象を受ける。
しかし、ここで中国軍のキューバ進出を認めることは将来に大きな禍根を残すことになるので、米国としては絶対に許さないとの厳しい立場で臨むべきであろう。バイデン政権は、キューバ政府高官に対し主権が侵される恐れがあるといった指摘を行ってキューバ自身の中国に対する懸念を利用しようとしているとも報じられている。確かに、かつての中ソ対立の頃、キューバはソ連の側に立ち中国と対立した時期もあり、わだかまりがないわけでもなかろうが、時代は変わっている。
バイデン政権としては、キューバの主権というよりも、中国の基地建設を許せば対キューバ制裁の緩和や撤廃の余地はなくなるといった切り口から毅然とした対応をとることが効果的ではなかろうか。
中国は「米国の台湾支援と同じ」と言うが
中国外務省は、いつもの通り一連の事実をすべて否定し、台湾周辺の米軍のプレゼンスや米軍による台湾軍の訓練を非難している。しかし、これらは武力による現状変更の威嚇を露骨に行う中国に対する抑止および台湾の自衛権の強化を目的とするものである。米国は、キューバについて武力による現状変更を行う意図もなくその威嚇も行っていないので、台湾問題における中国とキューバに関する米国の立場は全く事情が異なる。
キューバとしてもよく考えた方が良いであろう。しかし、6月半ばにイランのライシ大統領がベネズエラ、ニカラグアとともにキューバを歴訪し、反米同盟の結束を強めた。
特に、キューバは9月にG77(国連機関での発言力強化を目指して形成された途上国のグループ)と中国の首脳会議を開催する旨発表し、中露同盟の支援国グループのリーダーシップを取り、グローバルサウスを中露陣営に取り込む応援団長的な役割を果たそうとしており、基地問題でも中国に協力する可能性が高い。
この問題は、米中冷戦を将来に向け更に固定化していく方向に作用する恐れがあろう。