米バード大学教授で米ウォールストリート・ジャーナル紙コラムニストのミードが、6月12日付け同紙に‘Russia, China and Iran in America’s Backyard’(米国の裏庭での露中イランの動き)題する論説を書き、ラテンアメリカの不安定化とロシア、中国、イランの影響力伸長は米国の国益を害しているが、米政府は十分に対応していない、と指摘している。要旨は以下の通り。
ラテンアメリカのニュースは暗いが、バイデン政権の反応は鈍い。ラテンアメリカのほぼ全ての国で大規模な社会的・政治的・経済的危機が深刻化する中で、米国の国益は脅威に晒されている。
ラテンアメリカのポピュリストは自らの十八番の政策の失敗を、従来通り、資本主義と米国のせいにしている。彼らはまた、米国の敵を特別待遇している。イランのライシ大統領がキューバ、ニカラグア、ベネズエラを公式訪問した際は、正にレッド・カーペットの歓迎だった。ロシア、中国との関係はブームだ。キューバ経済は、60年間の社会主義者の計画にもかかわらず未だ国民の基本的欲求さえ満たしていないが、ロシアは冷戦時の支援努力を再開している。
しかし、ロシアの努力は中国に比べると小さく見える。ラテンアメリカとカリブ地域との中国の貿易は2002年の180億ドルから現在4500億ドルに急拡大し、2035年までに7000億ドルになると予想されている。ボリビアのリチウム採掘からパナマ運河の両入口での戦略的港湾建設まで、中国企業は重要インフラに関与している。地域の5カ国における11を超える宇宙施設で、中国は高度な追跡・偵察能力を得ており、このネットワークを更に拡大しようとしている。
西半球へのライバルの侵入は、常に米国に政治的火種となってきた。しかし、現在、ラテンアメリカとカリブ地域は、米外交当局者が冷戦後のライバルへの自己満足に浸っているように見える最後の場所だ。旧ソ連諸国へのロシアの野望が欧州の平和に脅威となり得るとの見方や、台湾周辺での中国の軍拡が米国の国益に影響するという考えを一蹴してきたのと同様に、外交当局者は中国、ロシア、イランの西半球での活動活発化が米国の安全保障を害するかもしれないとの危惧を盲目的に否定している。
米国の外交政策失敗に一つのパターンがあるとすれば、それは、米国国益の犠牲の下、壮大で漠然とした外交政策目標に執着してきたことだろう。近隣諸国の安全と繁栄は米国にとり大いに重要だが、ラテンアメリカは、冷戦以降、良くて米国外交の後知恵にとどまってきた。
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ミードの指摘は正鵠を得ている。米国の裏庭であるラテンアメリカの状況は悪化の一途をたどっている。