チリで行われた制憲議会選挙で右派が圧勝し、新憲法案が右派主導で起草されることとなったことについて、米ウォールストリート・ジャーナル紙の5月10日付社説‘Chile’s Freedom Lovers Strike Back’は、チリが、市場主義経済の下での発展の成功モデルに戻る可能性がでてきたと論じている。要旨は次の通り。
5月7日、チリで新憲法を起草する制憲会議議員の選挙において、保守派は51議席のうち33議席を獲得、憲法草案の内容を決定するのに必要な5分の3を上回った。
数カ月に及ぶ街頭での暴動の末に実施が合意された2020年の国民投票により、ピノチェト政権下で制定された1980年憲法に代わる新しい憲法の制定を目指すことになった。
最初の憲法改正案は、左派が支配する制憲議会によるもので、重要な民主主義の制度を解体し、三権分立を弱めることを意図するものであった。そして、政府の権限を拡大すると共に、チリを民族的対立により分裂させる可能性がある多民族国家とすることを目指すものであった。
2022年9月に行われた国民投票で、有権者は62%対38%で388条からなる怪物のような新憲法案を否決し、窮地を脱することができた。憲法改正プロジェクトに関する2019年合意は、これで終わりとなるはずであった。
しかし、憲法改正に再挑戦することが政治的に合意され、有権者は再び投票所に向かうことになった。チリ人は、2021年12月に左派のガブリエル・ボリッチを大統領に選出し左傾化するように見えた。しかし、高い犯罪率と弱い経済が、多くの人々に再考を促した。ボリッチは7日の最大の敗者である。制憲議会での新たな多数派は、チリ経済への注目を集めた自由市場や政府の限定的な役割といった理想が再び戻ってくることを暗示している。
勝利者は、議会で23議席を獲得した共和党と、その指導者である元大統領候補のホセ・アントニオ・カストだ。カストは保守派で制度主義者である。選挙以降、ペソと現地株価は上昇した。12月の国民投票で憲法草案が承認される必要があるため、まだ危険は残っている。制憲議会の課題は、財産権、法の支配、政治的競争を草案に盛り込み、国民に売り込むことである。今回の投票により、チリは、ラテンアメリカの稀有な成功例となった民主的な構造を維持する可能性が高まった。
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5月7日に行われたチリの制憲議会選挙で、右派が改正案の採択に必要な6割を超える議席を獲得したとされ、新憲法案は、中道右派主導で起草されることとなった。
上記の社説は「自由主義者の反撃」というタイトルをつけているが、実体は、行き過ぎた左派路線に対する懸念と、治安問題や経済問題に対応できない政権に対する不満により中間派や無党派層が左派離れをしたのであって、必ずしも右派の自由主義が評価されたわけではない。