2023年2月5日(日)

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2023年1月21日

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藤原章生 (ふじわら・あきお)

記者・作家

記者・作家。北海道大学工学部卒。1989年より毎日新聞記者。ヨハネスブルク、メキシコ市、ローマなどに駐在。2005年、『絵はがきにされた少年』(集英社)で開高健ノンフィクション賞受賞。近著に『ぶらっとヒマラヤ』(毎日新聞出版)。
 

 

 南米で起きていることを報道だけで知るのは容易ではない。中立、客観という視点があいまいで、司法の場でさえも恣意性があり、左右に揺れることがあるからだ。

 ある事件を調べたいと思ってジャーナリストや政治学者を探そうとしても、「右、左、どっち側?」とよく聞かれる。分断という言葉をここ10年ほどよく聞くが、南米では半世紀も前から当たり前のように、分断がある。

右派の抗議者(左)と警察。どちらの言葉や行動が正しいのかを知るのは難しい(AP/アフロ)

 労働組合出身の左派のリーダー、ルラ・ダシルバが大統領に就任した直後の1月8日、「ブラジルのトランプ」と呼ばれる右派の前大統領、ジャイル・ボルソナロを支持するデモ隊約5000人が、議会、大統領府、最高裁を襲撃した。

 これはどういうことなのか。

 左右分断が極まった象徴的事件。トランプ派による2022年1月6日の米国議会占拠のまねごと。ボルソナロが敗れた大統領選を認めない右派の怒り。左派のカリスマ、ルラの復活に対する既得権益者やビジネスマンらの恐れ。軍政復活を望む勢力の陰謀。政治不信、アナキズムの果ての出来事。自撮り狙いの乱暴者たちのパフォーマンス。3年におよぶコロナ蔓延がもたらした不安の爆発……。

 あらゆる解釈が出ても、その真偽は確認しようがない。解釈の根拠となる事実一つでさえも疑わしいからだ。その疑わしい事実、印象論、イメージをモザイク状に積み上げたのがブラジル政治とも言える。

 ブラジル政治の現代史をたどるドキュメンタリー映画「ブラジル 消えゆく民主主義」を見ると、イメージと現実の落差に驚かされる。


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