「Russia 1985–1999: TraumaZone-What It Felt Like to Live Through The Collapse of Communism and Democracy-(ロシア1985–1999 トラウマゾーン 共産主義と民主主義の崩壊に生きるとはどういうことか)アダム・カーティス監督、2022年10月13日、BBC iPlayerで配信。2022年テルライド映画祭でプレミア上映。
ウクライナ侵攻はロシアの劣勢が続き、早晩、プーチン大統領は譲歩せざるを得ない。兵器、食料不足でロシア兵の厭戦気分が高まり、反プーチン色が強まり、政権は追い込まれる――。そんな希望的観測をよく耳にするが、「いや、ロシア兵もロシア人も最後まで耐える」とジャーナリスト、石郷岡建さんはみる。20代のころ、天文学でモスクワ大学に留学しロシア女性と結婚し、のちに離婚、1990年から2002年にかけ計2度、毎日新聞の特派員としてモスクワに滞在した人だ。
思い入れが強い気もするが、言い分はこうだ。第2次世界大戦で旧ソ連の戦死者は他を圧倒している。軍人が1450万人、民間人が700万人に上り、日本はそれぞれ230万と80万人なので、異常な多さだ。身内の悲劇は孫、ひ孫にわたって伝えられ、戦死など人生の不条理に慣れた国民という面がある。
「ロシアはドイツと3都市で壮絶な戦いをして、レニングラードだけで100万人以上死んでいます。米軍の第2次世界大戦死者数を上回っているんです」。ちなみに米軍の総死者数は29万人超だ。
「だから、ロシア人は日本軍を褒める。爆弾抱えて戦車に突っ込むとか。うちもそうだったって」。そんな気質から、今回の戦争も「プーチンが交代しない限り最後までやる」と石郷岡さんはみている。
最後とは。「場合によっては核を使う。使う気持ちはある。ウクライナにではない。米国に。ロシア人のほとんどはウクライナとは戦争をしたくない。だけど、ウクライナを使っている米国には降伏しない。もし、負けたらロシアは崩壊します」