「ロシアの敗北は突然やってくる……そして民主化は不可避……。
そのロシアの攻撃は停滞するか後退している。年配者や囚人が装備も訓練も無しに前線に送られている。彼らは1960 年製の古地図を持って、ウクライナの荒野をうろついている……」とニューヨークタイムズ紙は書いている。
ロシアの国営テレビでは政権エリートたちが「ソ連崩壊以来最大の危機」だと怒りを込めて論じている。彼らはロシアの危機を認識している。プーチン大統領は年末恒例の記者会見を取りやめた。
世界の論壇ではプーチン政権の崩壊を予想する議論が数多く公然と行われている。「敗北は突然やってくる。広がった不満は政治危機を引き起こす」とブルッキングスの専門家は警告している(「Time for the West to think about how to engage with defeated Russia」)。プーチン政権はクーデターで倒れるのではなく自重で倒れると云う議論もある(「What Could Bring Putin Down? Regime Collapse Is More Likely Than a Coup」)。
だがロシアの事だ、勿論、異論もある。
「ロシアの支配層である、官僚、法執行機関、数百万の軍隊などでは強い権威主義の下で依然として強固だし、不満層は国外に出たし、国内では抗議も反戦運動も無い」と云う観察もある(「Putin’s peace ploy is a ruse to rearm」)。それに、仮にプーチン政権が失脚しても同じような強権独裁者が出てくる。その危険は常にある。
しかし、私見では大多数のロシア人は最早再び「報酬の蜜を求める追従者のみが闊歩する恐怖と不信の社会」に戻りたいとは思わないだろう。ロシアに留学経験があるウイルソン・センターのロシア専門研究員ルシアン・キム氏はロシア人社会で長期間住んで「彼らが如何にヨーロッパと同じ生活がしたい」と願っているかを論じ、「ロシア独裁宿命論」を強く否定している(「Why Isn’t Russia a Democracy? The country wasn’t preordained to despotism or a clash with the West.」)。
それにロシアは民主化出来ると云う議論はロシア内外で既に広範に行われている。 ロシアのコズイレフ元外相なども強く論じている(「Why Putin Must Be Defeated」)。ロシアと歴史と地理を共有し、お互いに共生し殺戮し合い、ロシアと云う国を骨の髄まで熟知しているヨーロッパ人、有力政治家や研究機関、欧州議会までがロシアの民主化は可能だと論じている(「MEPs call for new EU strategy to promote democracy in Russia」)。