2024年6月17日(月)

Wedge OPINION

2022年12月27日

 ワシントン・ポスト紙はプーチン政権によって投獄されている民主派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の手記を入手して最近全文を公表した(「Alexei Navalny: This is what a post-Putin Russia should look like」)。同氏はロシアには議会制共和国が必要で、それがロシア帝国の権威主義を停止し、ロシアが問題を生み出すのではなく、問題を解決するのに役立つ良き隣人になるための第一歩だ、と論じている。

 CNNは勇敢にして沈着で人間性に溢れるナワリヌイの指導者像を映画化し国際的な反響を起こした。ワシントン・ポスト紙もCNNも今が彼の意見を世界に伝える時期だと判断したのだろう。

民主化するロシアは欧州社会の一員になる

 ロシアが民主化の方向に向かえばどうなるのか? 日本を含む西側諸国全体がロシアの友好国となってあらゆる面で協力を強化するだろう。ロシアの民主化を後押しするダイナミズムが西側全体から翕然(きゅうぜん)として湧き上がってくるだろう。

 何故か? それは西欧側にもソ連崩壊後ロシアに援助の手を差し伸べなかったと云う自省があるからだ。バーゼル大学のシェンク教授は第二次世界大戦後にドイツ国民は連合国から大きな支援を受け、徹底的に民主主義を教え込まれたが、ソ連崩壊後のロシアではそうではなかったと論じている(「ロシアに民主主義は訪れるのか?」)。

 この経験があるので、ロシアが西側に向き始めたら、経済的、技術的協力は勿論だが、都市や市民団体、学術団体等との交流が大規模に行われるだろう。ロシアに対する「新マーシャルプラン」の提案が既にフォーリンアフェアーズ誌に掲載されている(「Putin Is Going to Lose His War” And the World Should Prepare for Instability in Russia」)。第二次大戦後ドイツや日本が連合国側の全面的な支援を受けて強固な民主主義を実現したのと同じようなことがやっとロシアで実現する。 

 経済の分野だけでなく、欧州とロシアは一種の運命共同体だとする意識も既に存在している。欧州連合(EU)の政治的未来に関する政策研究を専門とする「ウイルフレッド マルテンス・センター」が22年7月に公表した報告書(「The EU’s Relations With a Future Democratic Russia」)はその一例だ。

 この報告書は民主化したロシアが繁栄して行くことがEUの基本的利益だと強調し、ロシア支援の内容を詳細に論じている。これがEUの歴史観だと云える。

自由民主主義圏の安全保障上も動き出す

 ロシアが民主主義に向けて動き出すと、軍事及び軍事技術の面でも大きな衝撃が走る。この分野では現在はロシアと中国は「協力と補完の関係」にあり、両国の協力が生み出すパワーの脅威は単なる「足し算」以上のものがあると米国軍事当局者は指摘している。

 ロシアと中国はこの協力関係を利用して軍事面での技術革新を加速し、米国のグローバルリーダーシップを切り崩し、米国がロシア、中国と交渉せざるを得ない環境を作り出そうと懸命だと米国は見ている(「China and Russia’s Dangerous Convergence How to Counter an Emerging Partnership」)。米国政府が2022年10月12日に発表した「国家安全保障戦略」(「NATIONAL SECURITY STRATEGY OCTOBER 2022」)においても以上のような認識に立脚して中国の政策意図に強い関心を払っている。

 民主化するロシアは中国と進めてきた軍事・軍事技術の協力を停滞させることになるだろう。その限度でロシアは西側自由主義陣営の安全保障に前向きの影響を及ぼす。逆に、西側がロシアの民主化に無関心でいれば非常に痛い目に合う危険がある。


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