2023年1月30日(月)

WEDGE REPORT

2022年12月5日

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藤原章生 (ふじわら・あきお)

記者・作家

記者・作家。北海道大学工学部卒。1989年より毎日新聞記者。ヨハネスブルク、メキシコ市、ローマなどに駐在。2005年、『絵はがきにされた少年』(集英社)で開高健ノンフィクション賞受賞。近著に『ぶらっとヒマラヤ』(毎日新聞出版)。
 

 

 善人はいる。悪人もいる。善人が小さな嘘をつくように、悪人にも微かな善はある。では、悪人はなぜ悪をなすのか。動機は何か。デンマークのトビアス・リンホルム監督による米国映画『グッド・ナース』は、見た者にそんな問いを残す作品だ。

Netflix映画『グッド・ナース』独占配信中(JoJo Whilden / Netflix)

 舞台が大きな総合病院のため、全体の色調は暗く、セリフも限られている。

 画面は1996年のペンシルバニア州の病院から始まる。足だけが見える患者に異常事態が起きる。発作による心停止だ。

 若い男性看護師がそれに気づき、同僚、医師らが集まってくる。緊迫した中、心臓マッサージが加えられるが、蘇生はかなわず、患者は亡くなる。

 その一部始終をベッドの足元で見つめる男性看護師の横顔を、映画はワンカットで映し続ける。男は放心しているようにも、悲しそうにも見えるが、やや荒い息遣いから興奮しているようでもある。

 廊下を歩く男の背中。肩を落としているようにも、あるいは無気力にも見える男の後ろ姿とともに、タイトル「グッド・ナース」が現れる。

 善なる看護師。この善とは何を意味するのか。

私たちはどう悪と立ち向かうのか

 場面は7年後、2003年のニュージャージー州に飛ぶ。そこで働く主人公の女性、ジェシカ・チャステイン演じるエイミーが良い看護師なのだと、見る者はすぐに気づく。シングルマザーで少し難しい娘を抱えた彼女は、自身が心臓病を患いながらも、暮らしのため、そして患者のために懸命に働いている。

 そこに別の病院にいた男性看護師、エディ・レッドメイン演じるチャーリーが転職してくる。薬の処方のやり方などを教えるうちに親身になっていくエイミーは、離婚したため娘を恋しがっている彼を家に招く。互いを気遣うことで、静かな友情が芽生えていく。

 だが、彼が来てほどなく、病院内で不審な死が増え始める。点滴に薬物を混入させることで、患者を死に至らしめる手法で、警察も彼女も次第にチャーリーを疑い始める。


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