2024年4月14日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年6月29日

 5月24日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、同紙ラテンアメリカ編集員のマイケル・ストットが、ラテンアメリカで米国のイニシアティブは成果を上げておらず、貿易・経済協力・民間投資面で中国との競争に敗れつつあると警鐘を鳴らし、問題点を解説している。

(Oleg Elkov/gettyimages)

 中国の対ラテンアメリカ貿易は、2000年の120億ドルから2022年には4950億ドルと、今世紀に入って爆発的に増加し、中国は南米最大の貿易相手国となった。チリ、コスタリカ、ペルーは中国と自由貿易協定(FTA)を結んでおり、エクアドルは今月調印し、パナマとウルグアイが準備中である。しかし、バイデン政権は、新たな貿易協定を否定しており、ラテンアメリカ諸国を苛立たせている。

 貿易だけではなく、中国は、道路、橋、空港の建設と融資によって、ラテンアメリカで友人を獲得してきた。この地域の20カ国以上が中国の「一帯一路」構想に参加し、中国は2005年以来、地域の政府や国営企業に1360億ドル以上を貸し付けている。

 一方、米国は、汚職、民主主義、環境、人権、および中国とビジネスを行う上でのリスクに焦点を当てている。米国はラテンアメリカ諸国に対し、華為技術(ファーウェイ)の5G通信ネットワークを排除するよう懇願するが、米国などの代替製品はしばしばファーウェイ製品よりも高い。

 ルーラ・ブラジル大統領は4月、訪中し、100億ドル相当の約20の協定を結んだ。ルーラは、ファーウェイの研究所を視察し、半導体技術、再生可能エネルギー、衛星監視に関する協定にも署名した。

 一方、バイデン政権による2021年6月の「Build Back Better World(世界のより良い再建)」というインフラ同盟案は成果を上げられず、昨年6月、バイデンは更に「経済繁栄のための米州パートナーシップ(APEP)」を発表したが、約1年経っても具体的な投資はまだ発表されていない。

 障害の1つは資金調達で、米国の主要な開発金融機関は、低・中所得国を優先するため、ラテンアメリカの大半は対象外となる。他方、中国にはそのような問題はない。

 同時に、ラテンアメリカの不安定な政治を嫌う欧米企業は、資産を売却しようとするが、そこに中国人が買い手として待っている。例えば、米国の電力大手デューク・エナジーは、 2016年に中国国営の中国長江三峡集団にブラジルの10の水力発電ダムを売却し、カナダの肥料大手ニュートリエンは、世界最大級のリチウム生産企業であるチリのSQMの24%の株式を2018年に中国企業に売却した。

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 この解説記事は、最近のラテンアメリカにおける中国の経済進出に対抗する米国のイニシアティブがほとんど効果をあげていない実態やその理由を語り、このままでは米国はこの地域での影響力を失うことになると警鐘を鳴らしている。

 貿易、経済協力、民間投資の3つの面で、中国との競争に米国に勝ち目がない点にはそれぞれ理由があり、加えてバイデンの民主主義重視が柔軟な経済外交の展開をやりにくくしている面があることも否定できない。

 貿易については、国内製造業衰退の原因が貿易自由化にあるとして、米国政府は、保護貿易的な政策をとらざるを得なくなっている。米国は、既にメキシコ、チリ、ペルー、コロンビアなど12カ国とはFTAがあり、残ったエクアドルなどの国々の要望にも応じれば良いと思うが、国内政治状況がそれを許さない。


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