国際通貨基金(IMF)の西半球局長(ブラジル人)がアルゼンチン人エコノミストと連名で、‘Latin America’s Triple Policy Challenge’と題する論説を書き、8月30日付けでProject Syndicateのサイトに掲載されている。論説は、ラテンアメリカが直面している3つのマクロ経済上の政策課題を分析し対応策を論じている。主要点は次の通り。
・ラテンアメリカは、低成長、財政赤字及び貧困による不平等の拡大という3つの重要なマクロ経済上の問題に直面しており、パンデミックがさらにこれらを悪化させている。問題を解決するには、これらが相互に複雑に影響し合うことを認識した戦略により、3つの問題に同時に取り組む必要がある。
・パンデミックは、数十年にわたってこの地域を静かに悩ませてきた2つの弱点を前面に押し出した。1つは、広く利用可能で質の高い公共サービスを提供する国家の能力の欠如、もう1つは、労働市場における非正規労働の蔓延である。
・高水準の貧困と不平等がパンデミックによって更に悪化し、長年にわたる不公平感を強め、政策変更に対する社会的・政治的制約を強めている。
・パンデミックの危機の余波の中で、財政の持続可能性を回復するために努力しなければならない。特に事業や雇用を保護する制度から排除され、十分な公的支援なしに大流行に耐えた人々への社会的影響を考慮した対策を伴わなければならない。
・ラテンアメリカは、大半が開発途上の経済圏であるとともに民主主義の国々から成る。つまり、政策立案者が成長を促し財政状況を再建しようとするとき、有権者の不平等についての不満や政府への増大する不信を認識し、それに対応する必要がある。
・付加価値税と所得税を改革する原案が、大規模な街頭抗議行動を経て、法人税の引き上げを含む修正を余儀なくされたコロンビアの2021年税制改革は貴重な教訓だ。
・経済政策の社会的影響を最小化することは、単に道徳上の問題だけではなく、安定性の問題でもある。財政の持続可能性を確保するための政策は、それが社会的・政治的に持続可能である場合にのみ機能する。
・そのためには、構造的な成長を促進する政策によって補完されなければならない。政策立案者は、持続可能な経済的・社会的利益の達成を願うのであれば、このパズルのどの部分も無視することはできない。
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この論説の著者は、ブラジル中央銀行の元総裁で現在IMFの西半球局長を務めるゴールドファインと元アルゼンチン中央銀行のチーフエコノミストで大学教授のイェヤティである。彼らは、ラテンアメリカ諸国が直面しているマクロ経済政策上の3つの重要な問題を指摘し、その対応策について論じている。