多種多様な 津波シェルター
そんな中で民間企業から相次いで出てきたのが、津波シェルターというアイデア。水に浮くシェルターに逃げ込んで、難を逃れるというものだ。旧約聖書に登場する「ノアの方舟」の発想である。
5月に名古屋市のポートメッセなごやで開かれた防災・減災をテーマにした展示会「中部ライフガードTEC2013防災・減災・危機管理展」にも、何社かの「方舟」が出展されていた。
大阪府豊中市のミズノマリンが扱うのは25人乗りの救命艇シェルター。もともとマリンエンジンなどを扱う企業で、貨客船の救命艇のメンテナンスなどを行ってきた。大型船舶などに装備されている救命艇がベースだけあって、25人乗りで700万円からと、それなりに高額だ。
他にも鉄工所が開発した鋼鉄製のシェルターや、家庭向けのFRP(繊維強化プラスチック)製のシェルターなども展示されており、100万円以下の製品もある。もっとも逃げ込める人数が限られていることや、巨大津波という異常事態でどこまで強度を保てるかなど効果に対する疑問の声もあり、本格的に自治体などが採用するには至っていない。
アウトドア用品大手のモンベル(本社大阪市)が開発したのは浮力補助胴衣「浮くっしょん」。通常は折りたたんで椅子のクッションになっているが、津波の際には救命胴衣になる。いわば防災ずきんの津波版だ。大人用5000円、子供用3800~4200円で、布製のカバーも販売している。同社では災害発生直後の緊急避難用備品セットや、避難生活用のテントなどのセットも手がける。
これを用意すれば絶対に大丈夫と言えないのが防災の難しさだ。いくら万全と思っても必ず「想定外」の事態が起きるということを今回の東日本大震災は教えてくれた。身近な防災用品の整備などできるところから準備しておくことが肝心だ。9月1日は防災の日。国や自治体などの対策に頼るだけではなく、自分の身を守る方法に思いを巡らせてみてはいかがだろうか。
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