2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年9月4日

 東アジア首脳会議(EAS)を中心に、経済・安全保障面での集団的枠組みをより実効的にしていくべきである。アジア・太平洋では、安全保障のための多国間メカニズムが整備されていない。米国は現在、新たな多国間メカニズムを作ると、日米・米韓同盟が相対化されてしまうのではないかと懸念している。従って、アジアの安全保障問題で米ロの協力を進めるのであれば、ロシアは日米・米韓同盟関係を尊重しなければならない。特にこの地域で米国の最重要の同盟国である日本とロシアが関係を改善することが有用である。北東アジアでロシアの役割が目に見えるものにならない要因の一つとして、日ロ関係に問題があることがある。日本との関係を改善することで、ロシア極東部への日本の投資が増え、ロシアは大きな利益を得るであろう。日ロ関係推進のためのイニシャティブはロシアがまず取るべきだが、米国は、日本がそれに対して柔軟な姿勢を示すよう働きかけることができる。

 他方ロシアは要人の北方領土訪問を避け、同諸島の軍備強化を停止し、強襲揚陸艦ミストラルの配備も中止するべきである。ロシアは、プーチンが第1期の時に表明した歯舞・色丹を返還する用意を繰り返し表明してもいいかもしれない。北方領土問題をめぐっては、米国の役割は副次的なものであるが、日ロ双方に対して領土問題解決がもたらす利益を強調するべきである、と述べています。

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 この報告書は、米露関係における有数のオピニオンリーダーである、ハーバード大学ロシア研究所前所長のコルトン教授とロシア外交防衛評議会名誉議長のカラガーノフ教授によって主催された、アジア太平洋におけるロシアの位置づけに関する共同研究の一環として発表されたものです。

 中国が戦後の秩序の維持に事実上の異議を申し立てている現在、アジアにおける日米露の関係緊密化ができれば、それは望ましいことですが、(1)アジアにおけるロシアの経済力・軍事力が小さい、(2)米国は極東・東シベリアのエネルギー資源開発に加わるインセンティブが低い、(3)気を付けないと、北方領土問題で米国が日本に譲歩を求める可能性がある、という問題があります。


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