このほか難しい本を攻略するための方法論も興味深い。一節でもいいから「肝」だと感じた場所をとりあげて自分の読みを提示して語る「ナラティブ」や、読む順番を間違えないこと(社会科学系の本は古い方から、文学は新しい方からなど)、解説本や漫画で準備運動することを恥ずかしいと思わないことなどのアドバイスは貴重である。こうした参考書の利用は「邪道」と考えがちだが、理解の助けになるのであれば意味がある。
あなたも今日から「読書家」へ
本書では著者の長年の読書経験を踏まえて、本に向き合う方法論や技術が紹介される。本書のように体系的に読書術をまとめた類書は筆者の知る限りこれまでなく、優れた指南本である。紹介された内容のすべてが万人にあてはまるものではないが、それぞれのエッセンスは参考になるだろう。
著者が指摘するように、今は十分理解できなくても、人間は成長しており、将来読めるようになるかもしれない。そうした部分も含めて、本書は自分なりの読み方を見つけて自らの百冊を選ぶよう読む者を励ます。
巻末に記された選書リストも充実しており参考になる。大半が筆者自身も読んだことのない本ばかりで、自らの浅薄な読書歴に恥じ入るが、逆に読書への意欲をかき立てられる。本書を手に取った多くの人に「自分の百冊を見つけよう」と思わせる力作である。