本書『後悔を活かす心理学――成長と成功を導く意思決定と対処法』(中公新書)は「後悔」について研究し、それをとりまくさまざまな人間の心の動きと、人生のあらゆる場面での選択との関係性について考察した本である。
生きている人の中で、自分は後悔をしたことがないという人はほとんどいないだろう。筆者も含め、生きていれば何かしら失敗はするし、後悔することも多い。たとえ大きな失敗とはいえなくても、思い出すだけで自己嫌悪に陥るケースもたびたびある。そういう中で著者は、後悔はネガティブな影響しか与えない感情なのか、という問題意識を持って後悔についての研究内容を本書で示した。
後悔にはいろいろな形がある。著者が挙げている例をみても、電化製品や家具など高価で買い替える頻度が少ないものを購入した場合、「やっぱりあっちを買っておけばよかった」と思うことや、株式投資で迷った末に自分が買わなかった株が後日値上がりして後悔することなどもある。人生においても「あの時に結婚/離婚しておけばよかった」とか「もっとよく考えてから〇〇をすればよかった」などと思う例もあるほか、自分自身や肉親が死を迎える時の後悔もある。
著者は学問的に後悔をどうとらえるのかについて解説する。著者によると、後悔に関する心理学的研究の始まりは古いものではなく、これまでに「後悔理論」という研究があるという。それは「人間の意思決定は、後悔感情を最小化する」というものであり、極力後悔しないように考え、行動することだという。
さまざまな顔を持つ後悔
著者は後悔についてこう定義する。
さらに後悔は、過去展望としての後悔と未来展望としての後悔に分けることが出来ると著者は指摘する。
逆に起こりうる後悔を予想するという視点もある。未来展望としての後悔を著者は「予期後悔」という言葉でこう記す。