京都三大祭りのひとつである祇園祭が盛り上がりを見せるなど、京都が注目される季節がやってきた 。コロナ禍の影響が後退し、大勢の観光客が 集まった様子をテレビのニュースで見ても、京都がいかに人々を魅了する場所であるかが分かる 。
京都が多くの人々や文物、そしてお金を引きつけるのはなぜか。独自の取材でその秘密に迫ったのが本書 『解剖 京都力』である。大きな特徴は、新聞社の経済部記者が中心となって、経済取材の視点から 現代の京都を捉え直した点にある 。
京都で生まれ、世界で活躍する企業の数々
本書は主に五つの視点から京都に迫る 。企業 、老舗、 大学、 宗教 、ソフトパワーである。
本書を読み進めると、京都がいかに深い世界であるかを再認識させられる。企業一つを取ってみても、本社を簡単に東京へ移すようなことはせず、京都に根ざしたままグローバル企業として成功している。
それらの歴史をたどれば、多くはベンチャー企業からスタートしている。京セラしかり、ニデック (旧日本電産)しかりである。
無名のベンチャー企業を地域で支え、未来の大企業に育ててゆく 風土が京都にはある。京都発祥の企業の多くがグローバル企業としても通用し、iPhoneなど世界を席巻した人気商品の重要な部品を提供していることは、実はあまり広くは知られていない。
京都の老舗の分析も一読の価値がある 。ビジネスが複雑化する中で、京都の老舗というだけで商売が通用する時代ではない 。そこには世界規模で多くのユーザーに受け入れられる実力がなければならない。
本書で紹介される老舗企業の多くが、自社の強みを自覚して、他との協業をいとわず、工夫や決断を重ねることで長年生き抜いてきた。その背景には各々のたゆまぬ努力が見て取れる。