大学、寺社仏閣も経済活動の源泉
大学がいかに 京都の 経済や 企業に影響を与えてきたかも記される 。学生の街ゆえに若くて柔軟な発想とアイディアがベンチャー企業へと結びつく。さらに 学生の経済活動が観光産業など京都経済を支えている。
一方で学生の宿命ではあるが、卒業すれば京都からいなくなる者も多いというジレンマも抱えている。それでも大学がその役割として人材を創出し、多くの知見を社会に提供することで連携している様子は京都ならではである。
神社や寺など宗教関連の団体や組織も京都を語るには 見逃せない。「白足袋に逆らうな 」というのは京都で古くから言われる警句である。「白足袋」とは、日常的にそれを身に付ける茶人や花人、僧侶らのこと。それほどまでに社寺が京都に与える影響は大きい。
京都は さまざまな宗教や宗派が拠点や総本山を置く宗教都市でもある。多くの信者や門徒をはじめ宗派から寄せられる潤沢な資金が、歴史的建造物の維持や地域PRに活用されてきた。
寺社とこれを取り巻く周辺環境は、観光都市・京都を支える重要なインフラであり、それらが社会の中でどう機能しているのかを本書は経済的な側面から分析した。 このアプローチは 非常に興味深く、京都を支える大きな構造として宗教界があることにあらためて気づかされる 。
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その中にはオーバーツーリズム の問題も含まれる 。コロナ禍で観光客が減少した ことは京都にとって大きな痛手だったが、一方で押し寄せる観光客が京都にもたらす負の側面を冷静に考え直す期間であったともいえる。
実際、観光客が戻り始めると、交通機関の混雑や生活環境への 悪影響など観光公害の問題も再浮上している。京都経済を支える大きな柱である観光を市民生活の両立とともにいかに守り育てていくかも本書で指摘されている 。