たとえば、北朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は今年4月23日付の論評で、アメリカや韓国が北朝鮮との緊張緩和のための協議に応じる前提として「北朝鮮による核計画断念」を求めたことについて言及、「このような条件付きのいかなる話し合いにも断じて応じられない」とはねつけた上で、「もしわが国がアメリカと話し合いのテーブルにつくとすれば、核保有国同士としての対話であるべきであり、一方が他方の核兵器撤廃のみを強要するものであってはならない」と厳しく非難した。
そして北朝鮮は「核保有国」であることを誇示するかのように、今年7月に行われた朝鮮戦争休戦60周年の軍事パレードで、黄色の放射能マークが描かれた異様なカバン状の物体を抱えた兵士軍団を参加させ、世界の北朝鮮ウォッチャーたちを驚かせた。専門家たちの多くは、このような特殊な兵士グループが堂々と公開パレードで姿を見せたことは今回が初めてであり、3回目の核実験以降、北朝鮮が事実上「核保有国」となったことを世界に誇示する狙いがあったとみている。
これに対し、トーマス・カントリーマン米国務次官補(国際安全保障・核非拡散問題担当)は「労働新聞」論評が掲載された4月23日当日、ただちに「核保有国としての認知を求める北朝鮮の要求は非現実的であり、到底受け入れられない」との談話を発表、アメリカとしては、北朝鮮の核開発の進展具合いかんにかかわらず「核保有国」として認める用意がないとの立場を明確にした。
また、北朝鮮を「核保有国」と認めることを拒否するアメリカに対し、中国そしてロシアも同様の立場を表明しており、対イラン制裁などで対立してきた3国はこの点に関してだけは同一歩調を見せている。その最大の理由は、もし核保有国であり国連安保理常任理事国でもある米中露3国のうち1国だけでも北朝鮮を「核保有国」として受け入れた場合、国際的にそれが認知されたことになり、その結果、韓国や日本において、対抗上、同様の核武装論議に一気に火をつけることになるからだ。