2024年4月17日(水)

Wedge REPORT

2013年9月25日

 その最たる例が、韓国国防省が突如、米側に要請した米韓合同軍「戦時作戦統制権」(略称OPCON)の韓国への移管の「無期延期」措置にほかならない。

 「戦時作戦統制権」の韓国移管については、2007年当時、「自主国防」路線を打ち出した盧武鉉政権の要請により「12年4月、米軍から韓国軍への移管」で合意したものの、10年3月、北朝鮮による韓国哨戒艦沈没事件などを契機に、実施時期を「15年12月」に延期することで両国政府は合意済みだった。それが今回再度、韓国側の強い要請により「無期延期」の事態に追い込まれたのだ。

 そして延期が「無期限」となった最大の理由が実は、北朝鮮が今年2月12日に実施した3回目の核実験の成功により、事実上、「核保有国」(nuclear weapon state)となったのを実証するに至ったことだった。

 米国防総省当局者によると、とくにこの3回目の核実験は韓国のみならず、アメリカにとって「北朝鮮の核の脅威を劇的レベルまで増大させた」(ロイター通信)といわれる。

 その具体的裏付けとして、米議会調査局(CRS)レポートは、1回目の実験(06年10月)の爆発規模が「1キロトン程度」、2回目(09年5月)が「2~6キロトン」だったのに対し、3回目は「6~7キロトン」と威力の面で最大だっただけでなく、今回実験の主たる目的が「小型かつ軽量の核弾頭開発」にあった点を指摘している。つまり、西側諸国ではこれまで前2回の核実験結果として、北朝鮮が核爆弾製造にまでこぎつけたことは認めながら、それを小型化して長距離ミサイル搭載能力を手に入れるまでにはまだかなりの時間を要するとの見方が大勢だった。

 しかし、今回の実験成功により、いよいよ北の核脅威が現実のものになったのである。

 さらに、アメリカにとって衝撃的だったのは、これまでアメリカが日本、韓国など同盟諸国に対して保証してきたいわゆる“核の傘”による「拡大抑止力」の信頼性が大きく揺らぎかねない情勢となったことである。つまり、これまでの米軍事戦略によれば、もし、北朝鮮が38度線を突破して韓国に侵攻を企てた場合、米軍は北の拠点に対して核による報復態勢をとり、北の軍事挑発を抑止するというものだった。それが今、北朝鮮が米本土にまで達する核破壊力を入手したことによって、米軍の核抑止力の信頼性が損なわれることになったのである。

 08年まで在韓米軍司令官を務めたB・B・ベル陸軍大将が今年4月、韓国メディア宛てに送付した書簡で、OPCONの対韓移管停止を要請したことも、戦争責任当事者としての冷徹な分析に基づいたものだった。同大将は以下のように指摘した。


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