「朝鮮半島の危機に対処するために、米軍が主導権を握るべきである。私は、韓国軍が北朝鮮軍よりはるかに優秀であると確信しているが、北朝鮮が核兵器能力を維持しているかぎり、北朝鮮はいかなる将来の戦場および交渉においても、韓国を不利な立場に追い込む能力を有することになる。従って私はもはや、OPCONの韓国への移管を支持するわけにはいかない。北朝鮮が核計画に完全に終止符を打つまでは、戦争抑止あるいは北朝鮮軍を敗北に追い込む責任はアメリカにある」
3回目の核実験が与えた衝撃は当然、韓国も同じだった。
具体的に戦略見直す米韓両軍
これまで韓国の軍事戦略は、半島における核戦争はまったく想定しておらず、主として北朝鮮通常戦力部隊の侵攻抑止が目的だった。そして盧武鉉政権当時から「自主国防」のスローガンを高らかに掲げ、南北間で通常戦争が勃発した場合でも、米韓合同軍の「戦時作戦統制権」は韓国軍が掌握して北朝鮮軍を撃退できる態勢を確保できるはずだった。しかし、自ら核戦力は持たず、核有事の際の対応にはまったく知識も経験もない韓国軍としては、北朝鮮がすでに核能力を手中に収めることで、「戦時作戦統制権」の移管を断念せざるを得なくなったのである。
韓国軍は並行して、南北間の戦略環境の激変に対応するため、すでにいくつかの対応措置を打ち出し始めており、具体的には、対空防衛、戦略・戦術探知、早期警戒、指揮・管制・通信・コンピューターおよび情報(いわゆるC4I)、戦闘マネジメント、攻撃目標捕捉、ネットワーク集中戦争などの各面において「包括的近代化計画」に着手した。
一方、米軍も今年に入って、北朝鮮の核の脅威に対処するための具体的な対策を発表している。
そのひとつは、ヘーゲル国防長官が今年3月15日、急遽10億ドルを投じてカリフォルニア州およびアラスカ州における地上配備迎撃ミサイルを追加配備する方針を表明したことだ。この結果、北朝鮮からの攻撃に備えた両基地の配備はこれまでの30基から44基に増強されることになった。また、米軍は今年3月に実施した韓国軍との軍事演習に初めて核爆弾搭載可能なB2ステルス型戦略爆撃機2機を投入、米本土ミズーリ州ホワイトマン空軍基地から無着陸空中空輸飛行で韓国まで急派し帰投させる訓練を行ったが、これも、北朝鮮の核兵器による重大な挑発行為に対する抑止効果の立証が目的だった。
北朝鮮が、3回目の核実験を契機に、今年から初めて具体的に「核保有国となった」ことを対外的にアピールし始め、とくにアメリカに対しては「核保有国同士の2国間交渉」に応じるよう要求し始めたことは、とくに注目すべきである。