中島厚志が読み解く「激動の経済」

2013年9月25日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

財政悪化なしにオリンピックを行った国は多い

図表5:各国におけるオリンピック前後の財政収支の推移
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 主催国に共通してオリンピック景気があるということは、各国ともオリンピック開催に向けて大規模なインフラ整備などの財政支出を行ったということでもある。そこで、オリンピックの財政への影響が気になるが、84年以降の開催国の財政収支の動きは一様ではない(図表5)。

 実際、オリンピック開催時期に向けて財政赤字が拡大した国(ギリシャ、スペイン、ロサンゼルスオリンピック(1984年)時のアメリカ)がある一方、逆に財政赤字が改善ないしは健全さを維持した国(韓国、オーストラリア、イギリス、アトランタオリンピック(1996年)時のアメリカ)もある。

図表6:オリンピック前後における財政収支とGDPギャップ(スペイン)
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 ここで注目されるのは、オリンピックを開催しながら財政収支が改善した国々よりも、むしろ悪化した国々だ。なぜならば、オリンピック開催に合わせて財政収支が一段と悪化した国々が、現在のユーロ危機の中心となっている債務危機国スペイン、ギリシャと、レーガノミクスの下で財政赤字と経常赤字のいわゆる「双子の赤字」が増加していたアメリカ(84年当時)に限られるからだ。

 基本的に、主要先進国では実質経済成長率が潜在成長率を上回ると財政収支は改善していく。ところが、財政規律が乏しかったオリンピック開催時のスペイン、ギリシャはこの例外となっている(図表6、7)。

図表7:オリンピック前後における財政収支とGDPギャップ(ギリシャ)
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 当時のスペイン、ギリシャとも、景気は良かった(実質経済成長率>潜在成長率)のに財政収支はさらに悪化している。これでは、せっかくのオリンピック開催という好機が、逆に財政危機を招きよせてしまった形だ。

 一方、財政規律が強く意識された典型例が2012年ロンドンでオリンピックを開催したイギリスだ。ユーロ危機の最中だったとはいえ、2012年のイギリスでは財政健全化が強く意識されており、オリンピック開催を最優先して財政緊縮を棚上げにするといった動きはなかった。

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