個別塾に通っても〝爆伸び〟しない
息子は放っておくと勉強しない。杏子さんは「絶対量を勉強すれば、ある程度のレベルには達する。それ以上は本人の努力次第」と考え、仕事が終わってから深夜2時頃までかけて、息子がすべき勉強の範囲の計画を立て、毎日、課題を与えた。21時半までに終わればゲームをしていいと言うと、息子は必死に終わらせた。
また、杏子さんは「子どもに合う学校を探すのが親の仕事だ」と、忙しい仕事の合間に文化祭や体育祭の見学に行った。御三家のうちの1校を見学すると息子がポロっと「ここを受けたい」と口にし、志望校が定まった。
4年生までは塾の費用は月10万円だった。5年生からはメインの塾に加えて不得意な国語を伸ばすために違う塾にも通い、5~6年生の塾代は月20万円を超えるようになった。それに加えて、日曜特訓や正月特訓を申し込むと年間の塾の費用は300万円に膨らんだ。しかし、国語の成績は思うように伸びなかった。
「息子は国語の成績が悪いまま。個別塾に通ってもがいても〝爆伸び〟することはないと悟りました。年間300万円もかけて意味がなかったと思います。やりきったけど、無駄なお金だった。人間、得意なことしかしないのだから、得意なことを伸ばしたほうがいい。
受験を終えてから思うのは、メインの塾についていけずに個別塾に通うくらいなら、その塾をやめたほうがいいということ。無理に御三家を狙わないほうがいい。受験の渦中にいると、親が頑張らせればなんとかなると思いがちですが、それは落とし穴。本人にやる気がないと意味がないのです。
なんだかんだいっても、親が中学受験をさせているのです。試験日程の早い時期に絶対に合格する中学を受験しなければ、子どもは精神的にもたない。息子は偶然、御三家に合格できただけ。たとえ親が合格してほしいと思う学校でなくても、安心して子どもを任せられると思う学校を選ぶことが重要です。偏差値重視で選んで、合わない学校に入ってしまったら拷問でしかない」
幸せな結末を迎えることが大事
杏子さんの息子と娘に話を聞くと、二人とも通学している中学が気に入っている様子だ。そして、二人とも「中学受験は当たり前にするもの。塾は、先生が面白かった」と思い返した。
自由奔放な性格の息子は、時間を拘束されることに反発があるため「受験全体としては、楽しくなかった」と語るが、得意な算数がどこまで通用するか受験で腕試ししたい気持ちで挑んでいた。学校説明会で自由な校風が良いと感じた通り、御三家の1校に入学して自由な雰囲気の学生生活を楽しんでいる。