首都圏の中学入試は2月1日・2日をピークに、5日頃には終了します。その後、私たち名門指導会の講師たちは、その年の入試問題を実際に解き、各学校ではどのような問題が出題され、そこから子どもたちにどんな力を求めているかを分析します。その結果、見えてきたのは、近年の難関校の算数入試は、一見塾で習ったことのある問題のように見せて、実は違うタイプの問題をあえて出している学校が増えていること。
パターン学習からの脱却
例えば、男子御三家の一つ、武蔵中の算数入試では、このような問題が出題されました。
問題文がとても長いですよね。この問題をパッと見たとき、「あっ、ニュートン算だ!」と思った子は少なくなかったはずです。列にどんどん並んでいくという問題は、ニュートン算の定番だからです。実際、ニュートン算で解こうとした子はたくさんいたと思います。しかし、問題文をきちんと読み、一つひとつの条件を面倒くさがらずに書き出して整理していけば、気づくはずです。
「あっ、なるほど、つるかめで解けばいいってことか!」
解決の糸口が分かれば、計算自体はとても簡単です。むしろ、考える時間や考えた手順を書き出す時間の方がかかるでしょう。武蔵中の算数入試は式だけではなく、考え方も書くように回答欄が大きな自由記述スペースになっています。
ではなぜ、学校はこのような問題を出してきたのでしょうか。
おそらく、「ちゃんと読むこと」「ちゃんと書くこと」を億劫がらずに、自分の手と頭を使って考える子に入学して欲しいというメッセージを入試に込めたのではないでしょうか。
今の中学受験には塾通いが必須ですが、単元や解法で精緻に組まれたカリキュラムをこなしていく中で多くの子どもは「こういう問題のときは○○算」とか「こういう問いかけだったら△△算」といったようにパターン化していきます。その際に、本質をすっ飛ばして表面的な手順の暗記に走ってしまうのです。しかし、こうした機械的な学習をしていると、塾で習った問題には対応できても、少し問題の形が変わると「こんな問題は習っていない」とフリーズしてしまうか、「後から並んでいくんだから、たぶんニュートン算だろう」と、なぜその解き方をするのか理解しないまま適当に答えてしまうのです。
そんな手順だけの丸暗記学習をしてきた子はもうたくさんだ。近年の入試でこのような問題が多く見られるようになったのは、学校側のそんな切実な思いが込められているように感じます。