2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2023年3月26日

 武蔵の授業は、どの教科においてもレポートを多く書かせることで知られています。文章を正確に読み、情報を整理し筋道を立てて、答えを見つける。そして、自分が考えた手順が相手にも分かるように伝える。まさに、論理的思考力の育成を6年間かけて行っているのです。

 そんな学校で中高の6年間を過ごすのなら、その素地を持っている子に来てもらいたいと思うのは当然のこと。そう思うと、この問題は入学者資格を選別する「最初のレポート」と言えるかもしれません。

「なぜそうなるのか?」を考えて勉強してきたか

 早稲田実業中の問題も印象的でした。早稲田実業中学といえば、かつては「小学生にこんな問題を解かせるのか!」と驚くような難問を出す学校で有名でした。それが5年くらい前から少しずつ変化が見え始め、昨年、決定的な変化を見せたのです。そして、今年も同じような傾向の問題を出してきたことから、今後はこの路線でいくことを確信しました。

 では、どのように変わったかというと、
・特殊なマニアックな知識はいらない
・一見すると易しくなった
・特殊算(○○算)の問題はほとんど出ない

 こうした問題から想像できるのは、やはり武蔵同様に「なぜそうなるのか」自分で考えながら勉強をしてきた子に来て欲しいのではないでしょうか。

 注目すべき問題は、大問2の(1)。

 「下の図のような四角形ABCDがあるとき、a+b+c=dが成り立つことを説明しなさい」

 という問題で、塾では「ブーメラン型」と呼ばれるもの。この公式を使って、それに数字を当てはめ、角度を求める定番問題ですが、ここでは角度を求めるのでなく、「この公式が成り立つ本当の理由を分かっていますか?」と聞いているのです。

 これは中学入試ではあまり見ない問題です。まして、これまで難問を出していた早稲田実業中で、このような問題を出したことに注目すべきだと考えます。

 つまり、「『なぜそうなるのか?』ということをあなたは大切に学習してきましたか?」を問うているのです。

 多くの私立中高一貫校では、入学時から卒業時まで、どんな生徒が伸びたか伸びなかったかの6年間の学習データを取っています。これはあくまでも私の想像ですが、その結果、「なぜ」に興味がある子が伸びることを学校側は確信したのではないでしょうか。理由を知りたい、自分なりの納得感を味わいたいという自発的な探求意欲に基づく学習をしてきた子、または知的好奇心を持っている子に入ってきて欲しい、という気持ちの表れのように感じてなりません。

 また、早稲田実業中学は早稲田大学の付属校で卒業生のほとんどが早稲田大学に進学します。早稲田大学といえば、数年前に政経学部の入試で数学が必須になったことで話題になりました。これも私の想像ですが、おそらく大学側からも数学的思考(論理的思考)ができる学生を入れて欲しいという要望があったのではないでしょうか。

 きっとその考えは他の大学も同じだと思います。つまり、世の中が論理的思考力を持った人を求めているということです。


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