もうひとつの見方もできる。台湾との政治対話を進めることが、習が自らの権威を高めるために熱心であると見られている点である。台湾統一は中国共産党に残された悲願である。かつて、江沢民が自らの権威を高めるために香港返還を利用していたことと相通じる。
しかし、党内には台湾との安易な政治対話推進に反対するものもいれば、習が進めることには何でも反対しようというものもいる。習自身も政治対話に踏み切れるだけのリーダーシップを固めているのか、それともリーダーシップを構築するための「賭け」なのか。
いずれにせよ、習はバランスをとるために、「一つの中国」に言及しなければならなかったものと思われる。そして張はその意向を受けて発言しているということである。台湾側にとっては、警戒感を呼び起こされているはずであり、「一つの中国」という考え方が依然として政治性を持っている限りは、中国と台湾の政治対話が進むようには思われない。
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