10月4日の副頭取が記者会見を行っても批判は消えなかった。毎日は翌5日付朝刊で「初会見 疑問解明ほど遠く」と批判。朝日も「みずほ銀、解明ほど遠く」などと認識の甘さを突いた。読売はその日の社説で「暴力団融資 みずほの企業統治が問われる」とメガバンクの責任を欠く場当たり的な対応を強く批判した。
そして遅れに遅れた10月8日の頭取会見。これに先だって、日経は夕刊1面で「暴力団融資、元頭取に報告、みずほ、行内に資料」とスクープした。それまでみずほ問題に及び腰が目立っていた日経が一気に攻勢に出た報道だった。実際、午後の佐藤頭取の記者会見では同趣旨の説明を行い、マスコミの批判も一段とトーンが強まった。朝日は『重ねた「ウソ」 説明一転「取締役会で報告」』と痛烈に批判。産経新聞も社説で「金融機関の信用を失墜させ、暴力団排除の機運に水を差す、社会に対する大罪」と断じた。各紙も同様の報道内容だった。
当然だろう。様々な地域や業界で日本中の多くの関係者が身の危険を感じつつ暴力団排除に動いている中で、社会の公的な機能も担う銀行が暴力団融資に手を染めていたというのは弁解の余地はない。今後は現経営陣や元経営陣がどこまで知っており、関与していたかが焦点だが、取締役で資料が出ていたのに問題にせず、放置していたとしたら、取締役の「善管注意義務違反」とされても仕方がない可能性がある。弁護士3人で構成する第三者委員会が現在、経営トップを含めた事情聴取を行うなどの調査を行っている。みずほが業務改善報告を行う28日までにまとまる予定の調査結果と銀行の対応に注目が集まることになる。
説明責任を果たさないみずほの欠陥
そもそも、みずほが当初、記者会見すら行わず、事実関係を説明しようとしない態度をとったのは何故だろうか。筆者の過去の取材経験に照らしてみて想像するに、結局は内部の様々な事情から、銀行として自ら説明責任を果たすという「世の中の常識」に照らした適切な判断を下せなかったのだろう。以前だったら、金融庁は、「当局による処分の発表後に記者会見をするように」といった具合に銀行側に細かく指導をしていたはずだ。そうした場合、必ず銀行は記者会見をやる。実際に、昔は金融機関が発表するプレスリリースまで当局が事前にチェックしていた時代もあった。
想像だが、当局と監督される金融機関が距離感を持ち、ドライになった今、みずほに業務改善命令を下した金融庁は今回、あえて記者会見をする、しないを含めた指示を細かくしなかったのではないか。対応を任された形のみずほは、あくまで大騒ぎをしたくないという消極的な方向に判断をした結果、こうした事態を招いたのではないか。その背景には系列信販会社経由の融資であったこと、そして金額も2億円という少額だったことが影響している可能性がある。だが理由はどうあれ、旧第一勧銀が1997年の総会屋への利益提供事件で社会的な批判を受けた教訓が全く生かされていなかったといえる。
不祥事が起きた場合、迅速に説明責任を果たすという企業の危機管理が指摘されて久しいが、みずほも最初から適切な対応をとっていれば、ここまでの問題にはならなかったはずだ。暴力団融資それ自体が大きな問題だが、説明責任を果たさず、当局やメディアにウソを言い続けた経営姿勢にも大きな問題があり、もはや組織に欠陥があると言わざるを得ない。第三者機関の調査を踏まえ、社会が納得する形での業務改善や関係者の厳正な処分が求められていると思う。
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