2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年2月12日

 このような困難な状況の中でイスラエル側の考えをパレスチナ紛争の持続的な解決に変えさせることが極めて重要だ。サウジアラビア他の諸国がイスラエルとの関係を正常化するというのが(イスラエル側の態度を変える数少ない)インセンティブとなる。

 問題の解決のためには、11月の米国の大統領選挙の前に米国の継続的な、かつ、決意に満ちた外交的な努力が、イスラエルとパレスチナ双方の責任有る指導者とともに必要とされる。そして、米国と欧州諸国は、ニンジン(アラブ諸国のイスラエルとの国交樹立)だけでなく、ムチを振るってイスラエルの指導者達にパレスチナ国家の樹立は、彼らの利益となることを理解させなければならない。

 これは、ハマスと過激主義者達に対して対抗する唯一の方法であり、パレスチナ人が彼らの未来に希望を抱くことを守る方法である。イスラエルは、ハマスに対して大きな打撃を与えているが、その運動やイデオロギーを取り除くことは出来ない。それが出来るのはパレスチナ人だけだ。イスラエルの指導者達が現実を無視すれば、それは際限の無い暴力の連鎖を宣告することになる。

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論理的で正論であっても、非現実的

 ガザの衝突を終わらせるためにアラブ諸国がパレスチナ独立国家の樹立と引き換えにイスラエルを国家承認するというプランが報じられているが、このプランは、何十年もの間使い古されたプランだ。米国がこのプランを押しているとのことだが、ガザの衝突を止めさせるための米国の苦肉の策であろう。

 過去、このプランが日の目を見なかったのは、エルサレムの管理権の問題等が理由だが、現時点ではイスラエル側が二国家解決案を受け入れる心理的な状況にないので実現はなおさら困難であろう。なお、2020年にアブラハム合意でバーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)他がイスラエルとの国交を樹立した様に、現在、大多数のアラブ諸国はパレスチナ問題よりも自国の国益を優先し、イスラエルと経済的、技術的関係を持つことを望んでいる。

 このプランの主張は、要するに(1)パレスチナ問題の解決にはイスラエルとパレスチナ独立国家を共存させるしかない、(2)そのためには、殆ど全ての土地を支配しているイスラエルに圧力を掛けてパレスチナ独立国家の領土を譲らせなければならない、(3)イスラエルとパレスチナが二国家解決に向けた交渉をするためにはパレスチナ側の指導者の刷新が必要不可欠、というものだ。

 この主張は、論理的であり正論である。しかし、昨年10月のハマスによるイスラエル人の虐殺の後では二国家共存案を多くのイスラエル人が感情的に受け入れられないであろう。

 これはネタニヤフ首相だけの問題ではない。感情が高ぶっている間は正論であっても受け入れることができない。正論をイスラエル側が受け入れることが出来るようになるには、彼等が一時の興奮から醒め、冷静にならないと無理だろうが、それにはまだ時間が掛かるのではないか。


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