パレスチナ自治区ガザでの戦闘でイスラエルのネタニヤフ政権を一貫して支持してきたバイデン政権が、ここにきて従来の立場の修正を迫られている。戦闘長期化で民間被害も深刻化する中、米国内では、若年層やアラブ系有権者の間で人道的配慮を無視したネタニヤフ強硬路線に対する批判が高まりつつあり、11月米大統領選への影響も懸念されるからだ。
じわじわと募る不満
バイデン政権は昨年10月、ネタニヤフ政権がイスラム過激組織ハマスによるイスラエル南部越境攻撃に対する報復措置としてガザでの本格的地上侵攻を開始して以来、緊急軍事援助を含め徹底した対イスラエル支援に乗り出した。
その後も、イスラエル軍による無差別攻撃が拡大、ガザ市内での民間人犠牲者も増える中で、「ハマス壊滅」を目標に掲げたネタニヤフ首相の軍事作戦を終始擁護し続けてきた。
Wall Street Journal紙が去る12月11日発表した米国内の一般世論調査でも、イスラエルのガザ作戦に対する支持率が55%と過半数に達したほか、「イスラエルへの共感」についての党派別調査では、民主党支持者48%だったのに対し、共和党支持者は69%と大きく上回っていることも明らかにされた。
こうしたことから、ホワイトハウスとしては、今回のガザ作戦に対する野党共和党側の明確なイスラエル支持を意識した確固たる対応をとらざるを得なかった面も否定できない。
しかし、戦闘が長期化する一方、ハマスの軍事施設のみならず、病院、アパートなど民間施設にも見境なく激しい攻撃を繰り返すネタニヤフ政権に対する国際社会の批判が高まるにつれて、米国内でも、イスラエル批判やバイデン政権の政策見直しを求める動きが出始めている。
New York Times紙とSiena Collegeが有権者を対象に実施した共同世論調査(昨年12月19日発表)によると、イスラエルの強硬軍事作戦継続の是非について、「民間人救済のために一時戦闘を停止すべき」と回答した人が44%だったのに対し、 「民間被害に関わりなく強硬作戦継続」への支持は39%にとどまった。
調査対象を若年有権者(28~18歳)に限定し、今回の紛争でイスラエル、パレスチナのどちらに「共感」するかを聞いたところ、過半数に近い46%がイスラエルではなくパレスチナ側の立場に理解を示していることが明らかになった。イスラエル側への「共感」はわずか27%だった。
これらの数字は、11月大統領選を控え、米国内で有権者がイスラエル現政権のガザ強硬作戦に対する不満をじわじわと募らせつつあることを示している。さらに同調査で、バイデン政権のガザ紛争への対応ぶりについても聞いたところ、「容認」はわずか33%だったのに対し、「否認」が72%と圧倒的に上回った。