2024年12月22日(日)

教養としての中東情勢

2024年1月10日

 イスラエル軍とパレスチナのイスラム組織ハマスのガザ戦争は1月7日で開戦から3カ月が経過した。終息にはほど遠く、レバノンにまで戦火が拡大する様相だ。背景には「戦争継続だけが政治生命を保つ道」というイスラエルのネタニヤフ首相の追い込まれた事情がある。だが、ガザの戦後統治や「ハマス攻撃調査委員会」の発足をめぐって政権は分裂、崩壊の瀬戸際だ。

自らの政権維持のために戦争を続けるイスラエルのネタニヤフ首相(ロイター/アフロ)

戦争が終われば政治生命も消失

 3カ月間の戦争では、パレスチナ自治区ガザ側の民間人の死者が約2万3000人。この他ハマスの戦闘員約8000人が死亡した。イスラエル側の死者は開戦時のハマスの攻撃による約1200人に加え、イスラエル兵185人が戦死した。イスラエル軍はガザ北部のハマスを解体したと発表、中部と南部に攻撃を集中しているが、まだ指導者らを発見できないままだ。

 イスラエル軍は1日、ガザに侵攻していた部隊のうち4個旅団(約2万人)を撤兵した。これは部隊の再編という意味もあるが、イスラエル北部のレバノンのイスラム組織ヒズボラとの戦線拡大に備えるためでもある。ヒズボラとの交戦はハマスがイスラエルを奇襲攻撃した昨年10月7日の翌日から始まった。

 イスラエルは新年早々、ベイルート在住のハマス幹部を殺害した。これにハマスを支援するヒズボラがイスラエルへのロケット弾攻撃を強め、1月6日には軍の基地などに向け40発を発射。イスラエルは8日にヒズボラの著名な司令官を空爆で殺害、本格的な戦争の危機が迫っている。

 元々ネタニヤフ政権内部では、ハマスに攻撃された後、ヒズボラを先制攻撃すべきだとの主張が高まった。ハマス同様、ヒズボラから不意打ちを食らうのではないかと恐れたためだった。ベイルートからの情報によると、米国のバイデン大統領が開戦後、急きょイスラエルを訪問したのは、ネタニヤフ首相にヒズボラへの先制攻撃をさせないことが大きな目的だった。


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