2024年12月7日(土)

教養としての中東情勢

2023年12月24日

 イスラエル軍の猛攻撃を受けるパレスチナ自治区ガザの住民の死者は12月20日、2万人の大台を超えた。イスラエル軍に攻撃の手を緩める兆しはなく、戦争は年を越えることが確実な状況だ。その中で、最大の関心事はイスラエルが躍起になって探すハマスのガザ代表ヤヒア・シンワルと軍事部門カッサム旅団の司令官ムハンマド・デイフの行方だ。2人はどこに消えたのか。

イスラエル軍が狙うハマスのガザ代表ヤヒア・シンワル(AP/アフロ)

発見された「動画」と車椅子のなぞ

 イスラエルは米国から民間人の犠牲者を抑えるよう強い圧力を受けながらも「ハマス壊滅作戦を止めるものはない」(ネタニヤフ首相)としてあくまでも戦闘継続の構えを崩しておらず、犠牲者は増える一方。2万人のうち、子どもが8000人、女性が6200人と弱者の被害が目立つ。行方不明者も7000人に上っている。

 勢力2万5000人といわれたハマスの戦闘員はすでに数千人が死亡したもよう。衝突が始まった10月7日以降のイスラエル軍兵士の戦死者も120人に達している。イスラエル軍は北部をほぼ制圧したとしており、現在は南部攻略に取り掛かかり、最大都市ハンユニスなどで戦闘が続いている。

 イスラエルの有力紙マーリブの20日の報道として伝えられるところによると、イスラエル軍はハンユニスのデイフ司令官の事務所近くにある地下トンネルの入口周辺で、車椅子2脚と「動画」を発見した。「動画」には司令官とみられる人物が映っており、車椅子も司令官のものではないかとされる。

 この報道が事実なら、司令官は最近まで同地域にいた証拠になる可能性が強い。司令官とガザ代表のシンワルの殺害はイスラエルの重要な戦争目的だ。

 2人の殺害ないし拘束によって「ハマスの組織を壊滅させた」として、終戦の大義名分を主張することが可能だ。血眼になって2人の行方を追う所以だ。


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