2023年11月19日、日本郵船が運航する自動車専用船「Galaxy Leader」(バハマ船籍、2002年竣工)が、イエメン・ホダイダ沖で拿捕された。イエメン北部を実効支配するアンサール・アッラー(以下、通称のフーシ派と表記)が実行を認めた。四方を海で囲まれた日本は、エネルギー資源の多くを海外に依存しているため、今回の事件が日本の海運とサプライチェーンに大きな影響を与えることが懸念される。
本稿では、23年10月7日のイスラエル・ハマス間の衝突を受け、紅海とインド洋で船舶への妨害行為が連続する状況について、特にフーシ派および同派を背後から支援しているといわれるイランが発する警告に注目して考察する。
イエメン沖で連続する船舶の拿捕
「Galaxy Leader」拿捕は世間に衝撃を与えたが、イエメン沖付近ではこれ以外にも船舶に危害を加える事件が続いた(図表1)。
11月19日に拿捕された「Galaxy Leader」は、運航は日本郵船だが、船主はイスラエル系英国船主レイ・カーキャリアーズ・グループに属しているとみられる。日本政府がフーシー派と直接交渉を模索しているとの報道が見られたが、現在まで同船舶は解放されていない。
続く24日に攻撃を受けた「CMA CGM Symi」(マルタ船籍、2022年竣工)は、シンガポールを拠点とするイースタン・パシフィック・シッピングによって運航されており、同船社を所有するのがイスラエルの富豪イダン・オフェル氏だとされる。
そして26日に海賊に襲われ救難信号を発した石油タンカー「Central Park」(リベリア船籍、2015年竣工)は、英国に拠点を置くゾディアック・マリタイムによって運航されており、同企業はオフェル一家に所属している模様である。同船舶はソマリアの海賊とみられる武装勢力による乗っ取り被害に遭い、26日に米国艦船に救難信号を発した。これを受けて、米国のミサイル駆逐艦「メイソン」が海賊を追い払ったが、翌27日未明に、フーシ派が実効支配するイエメン北部から「メイソン」に向けて弾道ミサイルが発射された。